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旧・満州を舞台にした物語を描くときに,直面するのは731部隊の存在だろう。島田一男の小説ではそのあたりに関する描写はなかったように思う。『大陸秘境横断』にも731部隊が登場することはなかったはずだ。

『鉄人』をスタートする前の取材で矢作俊彦は旧・満州に出かけたことが第1巻の付録で漫画家によりレポートされている。「百愁のキャプテン」のなかでの731部隊の扱われかたは記憶にないものの,『鉄人』の背景には731部隊がしっかりと押さえられている。

二村永爾はだから旧・満州には赴かず,香港を舞台に『フィルムノワール/黒色影片』がまとめられたのではないだろうか。まあ九龍城を舞台にした二村モノのアイディアは連載がスタートするはるか前に語られていたのだから,ことさら旧・満州を持ち出してあれこれと考えることもあるまい。

ただ,島田一男の大陸小説集を読んだ後,この舞台で,たとえば傑が描かれるならば,もしかするととても魅力的なのではないかと感じたのは事実なのだ。

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