夜と霧の隅で

多くの人にとってそうであるように江戸川乱歩は別にして,北杜夫の『どくとるマンボウ航海記』とヴェルヌの『八十日間世界一周』で文庫本を読む楽しさに目覚めた。夏目漱石はまた別として。私は中学生になったばかりだった。 北杜夫は新...

夜と霧の隅で

本書が取り上げようとするナチ国家における精神障害者大量「安楽死」と,それをとりまくナチズム期の精神医学および精神分析学の動向,さらにはその戦後への見逃すことのできない深刻な影響なども,そのひとつである。これらの歴史は,ご...

おともだち

父親が亡くなる少し前,とてもいやな出来事があって,直接関係ないにもかかわらず,以来,那智くんと連絡をとらないまま数年が過ぎた。 その数年前,那智くんはT3でつくった音源にかぶせるため,私の家でギターを弾いてくれた。仕事の...

珍来

喬司はB級グルメやファストフードにうるさかった。吉野家の牛丼やモスバーガーの食べ方など,彼のスタンダードを嬉々として披露する。 彼は味噌ラーメン好きだ。だから,美味い店でしか味噌ラーメンを頼まないという。 「美味いかどう...

珍来

珍来に通い始めたのは,アルバイトが決まる少し前のことだった。 その頃,喬司や徹とは酒を飲むより,喫茶店で時間を潰すことのほうが圧倒的に多かった。喬司は金の出入りの差が激しく,非道いときは“夕飯はタバコ3本”というような感...

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