LEAGAL PAD

会社をはじめてからしばらくの間,記録はメモ帳にとっていた。電話の連絡や決まった予定などをメモ帳1冊に書くスタイルだ。

ただし,メモ帳1冊にまとめられるようなきちんとした性格ではないので,メモ帳Aとメモ帳Bを並行して使い,メモ帳がみつからないのでメモ帳Cを急遽出してくる。そんなことが続いた。ノート1冊にまとめればよいのかもしれないが,なんだかメモであることがわかりづらいなあと思い,メモ帳をしばらく使っていた。

吉祥寺のパルコ地下に輸入雑貨店があって,ときどき閉店してはリニューアルし商品の傾向を変える。時間つぶしにはよいので,家内の買い物を待つ間,ときどき入っては眺めていた。数年前,その店で見つけたのがリーガルパッドだった。ノートというよりはレポート用紙だけれど,レポート用紙よりは堅苦しさがない。置いてあったのはuniversalのリーガルパットJRで,とりあえず3冊買った。

使い勝手はよかった。メモだとか,電話でのやりとり,ウェブ会議用に,そのうち取材の際にも携えていくようになった。ただし,その時点ではフォルダーは手に入れていなかった。

調べると伊東屋からフォルダーが販売されているらしい。元町に買い物に出たとき,見たところ,価格はそこそこするし,ほしいなあとは思わなかった。

SEPAのフォルダーというものがあることを,たぶん同じ頃に知った。ただし,以前は丸善が取り扱っていたらしいこのフォルダーはその頃,手に入らなかった。シンプルで使い勝手がよさそうだ。ネットで探していたとき,メルカリに丸善の文房具セットというのが出ていて,そのなかにSEPAのフォルダーが入っているのを見つけたので購入してみた。届いたセットのなかにフォルダーがもちろん入っていて,SEPAの黒ものだった。

以来,仕事でリーガルパッドにメモをとっている。3冊のuniversal製のものはしばらくすると使い終わってしまった。吉祥寺の店は何度目からの店じまいをして,売り物のなかにリーガルパッドはなくなっていた。文房具屋で探すけれども手ごろなものは見つからない。いつまでも使い終わったものの裏面にメモをしてしのいでいても仕方ないので,チャーミングセールのときに伊東屋のリーガルパッドを数冊購入し,それを使うことにした。

universalのものに比べると,伊東屋のものは紙が厚くて品質がよいといえば,そうなのだけれど,メモに使うには上品すぎる。適当なものが見つかれば伊東屋のものから切り換えようと思いながら,結局,購入していた伊東屋のリーガルパッドは使い終わってしまった。

ネットで探しても,もはや伊東屋のもの以外,Amazonの自社ブランドくらいしか選択肢がなくなっていた。先日,楽天でTOPSのものがリーズナブルな金額で販売されているのを見つけたので,5冊購入した。SEPAのパッドにセットすると,しばらくぶりでリーガルパッドが使いやすくなった気がする。

完全版

『ツーダン満塁』を読み続ける。たぶん20年くらい前から何度か思ったはずだけれど,この本,校閲が非道いまま刊行されている。「安倍譲二」に続き「高倉建」の字面が目に入ってくるやいなや,せめて誤植を修正した完全版をつくってほしくなった。初出一覧も不完全で,初出が掲載されているものと,いないものはどういう基準なのか理解できない。

前回のポストに記したように,朝日新聞に載った時評・エッセイをまるごと収載して,構成しなおすくらいのことはできそうだ。

他にも,「芸術新潮」と「ペントハウス(復刊後)」だと思うけれど,香港に関する原稿は書籍にまとまっていないものがそこそこあるのだから,これもまとめてほしい。731部隊のいない旧満州のたとえとしての香港という見立てで,これを考え始めると,島田一男の『珊瑚礁殺人事件』のアイディアまでつなげて,おもしろい物語ができそうなのだけれど。

最近

6月半ば以降続く咳。クリニックでは薬を処方してもらっていて,少しずつよくなっている。咳というのは一気には消えないものだな。

咳に思いっきり乗っかられいたため,仕事は少しずつ遅れ,ようやく8月進行に向けて舵を切る。矢作俊彦の『ツーダン満塁』を読み返していたら,どうしたことか安部譲二さんの「部」が「倍」になっている。

矢作俊彦が時事に関するエッセイを書き始めたのは90年前後,「ドリブ」の1ページ連載だったと思う。その前にいくつか種類が出ていた「ぴあ」のひとつで連載はあったものの。

2000年に入って,ウェブで時事に関するエッセイが始まって,少し後,「朝日新聞」で小さな連載が何回かあった。『ツーダン満塁』に収載されている以外にもあったはずなので,そろそろまとまるとよいのだけれど。間に書評委員を担当していた時期もあったように思うので,時事エッセイと書評・解説との二部構成でそこそこの分量になるのではないだろうか。

7/15

旧・満州を舞台にした物語を描くときに,直面するのは731部隊の存在だろう。島田一男の小説ではそのあたりに関する描写はなかったように思う。『大陸秘境横断』にも731部隊が登場することはなかったはずだ。

『鉄人』をスタートする前の取材で矢作俊彦は旧・満州に出かけたことが第1巻の付録で漫画家によりレポートされている。「百愁のキャプテン」のなかでの731部隊の扱われかたは記憶にないものの,『鉄人』の背景には731部隊がしっかりと押さえられている。

二村永爾はだから旧・満州には赴かず,香港を舞台に『フィルムノワール/黒色影片』がまとめられたのではないだろうか。まあ九龍城を舞台にした二村モノのアイディアは連載がスタートするはるか前に語られていたのだから,ことさら旧・満州を持ち出してあれこれと考えることもあるまい。

ただ,島田一男の大陸小説集を読んだ後,この舞台で,たとえば傑が描かれるならば,もしかするととても魅力的なのではないかと感じたのは事実なのだ。

6/23

風邪が長引いている。

今月中旬くらいから咳とだるさが引かない。先々週の土曜日に事務所近くのクリニックを受診し,処方薬を飲み始めた。

雑誌下版の時期なので,眠くなるPLのゾロを1日止めた以外は5日分飲み切った。回復しないため,木曜日に別のクリニックを受診しようと思ったところ,木曜日休診というクリニックが多いことに今更ながら気づく。金曜日に予約を入れて,木曜日は昼まで自宅で休む。

午後から印刷所で校正確認がある。起き出してシャワーを浴びてから家を出る。1時間ほどで校正の確認を終える。御徒町まで歩き,アメ横でコーヒー豆を買って事務所に戻った。仕事を片づけて早めに帰宅して横になる。熱が38℃台まで上がる。

金曜日は予約していたクリニックを受診。コロナとインフルエンザの検査をしたものの陰性。気管支炎か軽い喘息ではないかと。吸入薬を含め新たに処方箋をもらい事務所に行く。雑誌下版の片づけなどを済ませて帰宅。このところ,一日10時間近く眠っているかもしれない。

週末はほとんど自宅で横になっている。木曜日くらいから家内も同じ症状になったので,二人して週末を咳こみながら過ごす。

さすがに10時間続けて眠るわけではないので,横になりながら久しぶりに何冊かの本を続けて読んだ。再読ばかりとはいえ,大塚英志の『日本がバカだから戦争に負けた 角川書店と教養の運命』(星海社新書,2017年)は村上一郎の『岩波茂雄と出版文化』(講談社学術文庫,2013)を読んでいないと源義のあたりはミスリードされかねない書きっぷりだが,後半の工学的知に関する考察はメモをとっておかねばならないと思った。

その後,つい『フィルムノワール/黒色影片』を読み始めてしまった。国内での出来事あたりは何度読み返しても面白く,場面が香港に移ってからをどうたのしむか。チャンドラーの長編がそうであるように,矢作俊彦の二村永爾シリーズの本作と前作は途中でがらりと場面が変わる。筒井康隆の『旅のラゴス』は越えすぎでめまいを覚えるものの,小説は改行すれば一気に時空を越えられる。

で,このところ考えていたのは,矢作俊彦は満州を舞台にした小説をもう少し書いておけばよかったのではないかということだ。島田一男の『幻の街』(大陸書館,2022)を読み返していて,町の出自を是とするものではないが,島田一男が満州を舞台に描いた小説を,矢作俊彦がリコンストラクションすれば面白い作品が生まれたのではないかと感じた。『百愁のキャプテン』(『アマ★カス』)が完成され,満州を舞台にした短篇シリーズが描かれることを夢見ているのだ。

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