Electronic Commerce

自力でECサイトをつくった(まだ途中ではあるものの)備忘録。

ひとりで会社を立ち上げて,まだ日が浅い頃,個人で借りているサーバーに追加して法人契約をした。アカウントを入手して,あとはWordpressでサイトをつくる。

ここまでは個人でサイトをつくるときに何度か行ってきたプロセスをたどるだけなので大してむずかしいことはない。ここから先がやっかいだ。

個人事業主でもなく,一箱古本市の代替として自分のもっている本を販売する窓口にはStoresを使っている。BASEとかStoresとかを窓口にして品物を販売するのはそれほどむずかしいことではなかった。出版社のなかでもこのあたりもプラットフォームにして販売しているところが増えている。

出版社のプラットフォームなのだから,URLをまたがずに,本を買えるようにしたいと思うと,WordpressのEC採用プラグインに頼るしかない。ECサイトを単独で構築依頼すると,かなりの金額になる。仮に支払い可能な範囲での見積もりが出ても,スタート後の売上がどれくらいになるか予想できないなかで,「しょうがないから外注で」は避けるしかない。選択肢はあまりないのでWooCommerceを入れた。

まあ,ECサイト構築・維持管理を生業にしている会社がいくつもあるくらいだから,無料のプラグインでサイトを構築させては商売あがったりだからだろうか。WooCommerceによるECサイト構築のガイドブックは皆無で,ネット情報をたどって独自につくりあげる他ない。

もう一点。代金支払いの選択肢はある程度あるものにしたい。ここに登場するのが決済代行システム会社だ。最近,テレビCMを流し始めたSqureと,私がつかっているStripeのどちらかを使うことになる。ただ,ダウンロード販売(チケット販売)の可能性を考えるとStripe一択になる。自社店舗販売を想定するならばSqureになるという感じだろうか。

ECサイトを構築するには個人事業主よりは法人のほうが圧倒的に楽だ。法人で事業をスタートしたことのメリットを感じたのはECサイト構築のときがはじめてだったかもしれない。

遡ると,一昨年の年末,法人登記を終え,サイトの雛形もできた。もちろん自前でオリジナリティなし,どこかで見たイメージを換骨奪胎したものだ。年末に自宅でラップトップを開き,ECサイト構築に関する情報を探っていた。最初から最後まで解説したサイトはなかったものもの,タブを開いては前のタブに戻りをしばらくしながら,WooCommerce+StripeのECサイトつくりを始めた。履歴をみると2022年1月1日にStripeと登録(契約)をしたことになっている。

クレジット決済できるというのがStripeを使ううえでの一番のメリットで,ただしJCBはさらにもう一度,契約する必要がある。また,コンビニ決済(現状,セブンイレブンを除く)できるのもありがたい。

申し込んでから数日で使えるようになり,WooCommerceで登録した商品(書籍)ページに支払い方法にクレジットカードなどが明示されるようになった。WooCommerceには日本独自のプラグインもあって,それを実装すると選択肢に振替口座も加わる。

1月早々にサイトを作りこんでから,JCBも使えるようになり,それでも振替口座の手配を終えるまで半年以上時間がかかった。ひとりで仕事をしていると,空いた時間にWeb上にECサイトをつくるよりも,郵便局に足を運び手続きする時間のほうが捻出しづらい。

プラグインにより各サービスをつないでいるので,どれくらいこの状態が続くはわからないけれど,当面はしのいでいけそうな感じがする。で,経費はほぼかかっていないのだから,構築だけて200万円とかいうサービスとは違う土俵で,にもかかわらず同じようなサービスを使えるようになることだけはWebの恩恵だと思う。

Legal Pads

当初から,事務所で使う品物はほとんどセコハンで調達した。テーブルや書棚はリサイクルショップ品で,前の事務所から最小限もってきたものもある。それでも仕事が始まると,セコハンで調達できないものが出てくる。

消耗品は高円寺や吉祥寺の文具店で揃えた。高円寺のdaysは立派な文具店で,ここで見つけたガムテープカッターは使い勝手がよくて,ときどき発送サポートに来てくれる人が「こんなカッターがあるんだ」と驚いたことを覚えている。

吉祥寺パルコの地下で,輸入雑貨などをセール品扱いで販売している店がある。今もあるのだけれど,在庫の補充はほとんどしないようなので,以前手に入れられた品物であっても,今は並んでいないものが少なくない。universalのジュニア・リーガルパッドはここに並んでいたのをまとめて買ったのだ。以来,メモ帳は使わずに,リーガルパッドに日付とTo Doもしくは済んだこと,打ち合わせのメモなど,まとめて書くようにしている。

かなり前からカレンダーはWeb/iPhone上で管理して,それでもメモの都合があるため,年度版の手帖を毎年買ってはいた。年々,手帖を開く頻度は減り,にもかかわらず,あまり困らなくなってきた。そこでリーガルパッドだ。表面はだから日報のようなもので,裏面は打ち合わせや会議の記録に使う。表面はほぼ鉛筆書きで,1枚数日もつ日もあれば,数枚使う日もある。

吉祥寺においてあったのがuniversalのジュニア・リーガルパッドなので,1年以上,これを使っている。しばらくはこれで十分だ。ただし,探しているものがある。リーガルパッド用の軽いホルダーは以前は,丸善が輸入して販売していたらしいのだけれど,今は手に入らない。代わりにレシートフォルダを買って,それに挟んでみたけれど,ほしいものはこれではなかった。

ジュニア・パッドサイズの手軽なホルダーがほしいのだ。

週末

原稿をまとめる予定が遅延。土曜日は午前中,マンションの理事会に参加し,午後から事務所へ行く。夕方に家内,娘と吉祥寺で待ち合わせ。少し早く着いたので,古書センターとバサラブックスを覘く。キラリナで休憩した後,中道通りを進み,洋服屋に入る。ときどき恐ろしく値引きをする店で,夏だったかに来たとき以来のセールだ。

勧められるままに,トラウザーズ2本を購入。娘のセーターもついでに。夕飯をとって帰宅。

日曜日も事務所で仕事の続き。夕方から事務所のいらなくなった段ボールを片づける。定期的にこれをしておかないといつの間にか段ボールが狭いフロアを占拠し始めるのだ。ついでに家に帰ってからも同様の作業を済ませる。昨日に続き,家内と娘は出かけているので,家で少しだけ仕事を進める。夕飯を買って帰宅した家内,娘と食事をして一日が終わる。

いつの間には今月も終わる。

ブラウン

午前中は取材で近くの理髪店に伺う。予想をはるかに超えて知らないことばかりでとても面白かった。取材をお願いした方と昼食をとりながらあれこれ。

矢作俊彦の嗅覚を40年くらいにわたり,どこかで頼りにしていた面があり,それは今も変わらない。彼がツイッターで,誰だっただろう,高橋源一郎か青山真治だったかとやりとりしていたときのこと。震災後だったと思う。「あいつは右翼の使い走りじゃないの」というようなツイートしたことを覚えている。その後,政党をつくり,党首となった「あいつ」は一定の支持を得ている。

取材はお願いした方は代々,選挙に熱心な家系というか,それはたまたまなのかもしれないが,選挙というシステムを通して自分たちの声を国政はもとより地方自治にも届けることに力を注いでいる。「もしかした支持されていたら申し訳ないけれど」と前置きして,「あいつ」の政党について話が及んだ。前のツイート以来,「あいつ」とその政党に対し,距離をおき,どこかリトマス試験紙のように扱っていることを伝えると,その方は「わたしもそう思う」ということで,そのまま,鼻をつまんで支持することやなにやらに話が流れていった。

レベッカ・ブラウンの『家庭の医学』が刊行されたとき,

寒いと母が言うので、タオルを温めてあるキャビネットから看護婦が一枚出してくれた。私にもその匂いが嗅ぎとれた。清潔で温かさそうな湯気の匂いだ。

p.18

この箇所だけが印象に残り,いや,他の箇所はまったく覚えてもいないし,印象にも残らなかったのだけれど,「清潔で温かそうな湯気の匂いだ」というフレーズは,自分の記憶とどこかつながっている。

強引につなげてしまうと,「あいつ」とその支持者はどこか,世の中のリセットが可能だと思っているのではないかと感じてしまう。大塚英志による今世紀に入ってからの「ポスト○○」への懸念が思い出されるのだ。歴史修正よりもたちが悪いと大塚は述べている。

湯気の匂いはリセットし得ない。そこに手がかりを探ることが必要なのではないかと,まあ強引に結び付けてしまうのだ。

ケイゾク

対談のテープ起こしを整理する。途中から別の方に依頼した記録を整理した原稿が届いたので,そちらを1日半かけて調整して確認の依頼へ。対談テープ起こしの続きに戻る前に取材立ち合いの準備と取材で数日が終わる。

もともとテープ起こしが苦手だ。文章をまとめるとき,イメージしているのは「デッサンをもとに絵を描く」ことで,最終的に線は整理されるものの,可能なかぎり線を引いていく。石森章太郎の『マンガ家入門』だったかに1本の線に絞る(たどりつく)ために納得いくまで線を引くことという進言を忠実に守っているようなものだ。

録音テープがmp3になり,Wordにさえディクテーション機能が装備されるなか(わたしがつかっているOfficeは年間契約のものではないので,この機能を使うことができないが),2時間程度の録音データを数分で日本語にするソフト(アプリというのか,このところは)はいくつもある。

日本語にしただけでは,まったく使えないので,削ったり入れ替えたりしながら原稿をまとめていくことになる。手先の疲労感が少ないものの,結局,原稿をまとめるためにかける時間はそれほど変わらないというのが正直なところだ。

昔,速記屋さんという職業があって,対談などの場に同席し,傍目には解読できない記号で発言を残していき,その速記録を持ち帰り,読み解きながら原稿にして収めるのが仕事だった。わたしが編集の仕事をはじめた頃は同席してもらうようなことはほとんどなくなり,その場ではカセットテープをまわして録音し,カセットテープを速記屋さんに渡し,テキスト化してもらうなかでの付き合いがだいたいのところだった。

「ケバ取り」というとプラモデルをつくるときのイメージがまず浮かぶけれど,テープ起こしのレベルで「ケバ取り」といわれることがある。よほど話し慣れた人でないかぎり,言い間違いや言いよどみ,繰り返しなど,録音された音声をそのままテキストに起こすと,「そうなんだけれど,それじゃ原稿にならない」という暗黙の基準がある。ケバ取りは,まずはその基準で整理しながらテキストにまとめることを指し,人によっては,テープ起こしのレベルを数段階に分けて設定することもある。

速記屋さんの経験をもつ人に依頼すると,原稿として整理するのに手がかからない場合が少なくない。もちろん,元の話がある程度,構成されていることが前提などで,フリーハンドで話し合ってもらうと,いくら能力をもった速記屋さんであっても,届いたテキストを原稿に整理していくには相応の時間がかかる。

「早い安い」を売りにしている人は,聞き間違いや最低限の言い違いを統一するあたりの手をかけないで納品することがままある。偏見とはいえないくらいの頻度で,だ。この場合,元の録音を聴きながら,まず文意を確認し,それから原稿をまとめていくことになるので,コストパフォーマンスは悪い。

ソフトを使ったテキスト化は,「早い安い」の極北で,事前の構成をしたうえで始めた話し合いであっても,原稿としてまとめていくにはかなり大変な労力を要する。2時間の録音データを原稿にまとめるのに,2時間以内で終わることはほとんどないので,まず全体をテキストにした後で,削ったり入れ替えたりする作業を繰り返し,構成とつくっていく。1時間の録音をたとえば1,000字程度にまとめるときは,削りすぎて,聞いた話がほとんど使えなくなるという事態に陥ることもある。初手から見出しくらいつくってから削ればよいのだけれど,人の話は見出しに沿って展開するものではないので,こんなことを伝えたいと考えてもなかなかうまくすすまないし,「伝えたいこんなこと」にたどり着くにも時間がかかるのだ。

手がけている録音データの原稿作成を何とか明日あたりには終えたいのだけれど。

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