WORLD HAPPINESS 2017

いとうせいこうのライブが始まったあたりから再び,非道い日差しの下に戻った。ダブというと加藤和彦の“Around the World”とアンディ・パートリッジのソロくらいしかイメージ沸かない私だが,それでも聞きごたえはあった。

ZOMBIE-CHANGは,高橋佐代子ばりの地声の強さで,きちんとメロディがある曲をつくって歌えば,もっと面白くなるのではないかと思う。

GLIM SPANKYの最初のあたりで再び暑さに耐えきれず,ビールを調達してBエリア裏に避難する。家内は座椅子を広げて休んでいて,娘もあれこれ食べ物を調達しながら,くるりの出番を待っていた。

みうらじゅんの終わり近くになって3人でフィールドに戻る。

くるりは「ワールドエンド・スーパーノヴァ」からスタート。出だし,ボーカルのボリュームが低い。演奏を聴きながらバランスを調整するのはどうなんだろう。ギターのバランスはやや小さめ。バスドラが派手に鳴る。ファンファンが復帰後,初めて観るステージだ。バンドのレパートリーにトランペットが不可欠な曲が増え,きちんとトランペットが鳴ったほうが恰好よいと今更ながら感じた。

竹中直人は3曲くらい。カホンがあらきゆうこで,ならば,くるりのドラムもこの日だけは特別に受けてもらえばよかったのに,と思いながら「さよならColor」を聴いた。

電気グルーヴは2014年のときのほうがよかった。あのときは非道い天候がスパイスになっていたこともあるのだろうけれど。

TOWA TEIはノンストップで高橋幸宏やYMOのサンプリングを交えて心地よかった。このあたりになると日差しが少し弱まった。娘と家内は先に帰った。

ラストの高橋幸宏は「今日の空」からスタート。ザ・ビートニクスを続けて,再びのんをゲストに迎える。「タイムマシンにお願い」が演奏されたのだけれど,このときの鈴木慶一のギターの恰好よさといったらなかった。ニューウェイヴ魂炸裂,こんなリフを絡められるのかと目から鱗が落ちた。

本編は“Something in the Air”で終了。アンコールになったので,先に会場を後にした。

赤羽

連休初日は事務所で仕事。 昼過ぎに家内が茗荷谷まできたのでフゥで昼食を食べた。夕方まで仕事して,久しぶりに赤羽に行った。

平岩書店の均一を覗く。店内も見て,結局何も買わずに離れた。紅谷書店,ブックオフと回る。久しぶりに天心に入りたかったが,連れがいないので天宝楼菜館でビールとつまみをとって休憩。何度目かの『フィルムノワール/黒色影片』を読み終えた。今回が一番面白く感じた。 ついでに夕飯もとって帰る。

WORLD HAPPINESS 2017

宮内優里の曲はYoutubeで事前にチェックした。というよりも,今回,はじめて耳にするミュージシャンの曲はとりあえずYoutubeで確認したのだった。宮内はループ使いのエレクトロニカという印象で,ステージでも,トラックを重ねながら曲を演奏した。

ロバート・フリップのフリッパートロニクスは結局のところ,音を重ねながらループトラックをつくり,その上にギターソロを被せるという原理で,今にして思えば,エレクトロニカと発想はかなり近い。フリップの場合,ギター以外の音を重ねないのが潔かったのだけれど,後のサウンドスケープ時代になると,音がとっ散らかってしまい,その分,面白さが半減したように感じた。

宮内は曲によっては,トライアングルやギターのボディを叩いた音をサンプリングしながら曲をつくっていく。とりあえず暑いだけのフィールドに清涼感は漂う。もちろん実際には涼しくない。せめて秋空のもとで聴きたかった。

このあたりからBエリア奥の芝生と木が茂るあたりに退散した。日差しさえ遮ることができれれば,海風は不思議と湿気を感じない。Narbarichと関取花の演奏まではそのあたりで聞いた。

アルコールを飲んでも,すぐに汗になって飛んでしまい酩酊感がない。不思議な感覚のまま,生ビールを買いに行く。食欲はそれほどないものの,メニューにチリコンカンがあったので一緒に頼んだ。海沿いの木陰で食べてしまう。

Narbarichと関取花を続けて聴きながら,こういうシャレたアレンジとリズム中心のミュージシャンが目立つようになってどれくらい経つだろうかと思った。若い頃のように拒否反応はさすがになくなったものの,でもまあ何でもないのだ,実際のところ。再び音楽は消費される。

大中

World Happinessで高橋幸宏の姿を見た途端,徹が人民服と人民帽を普段着にしていたことを思い出した。

連れ立って,むげん堂にもよく通ったものの,買うのは香や小物ばかり。洋服を買うのを目にした記憶はない。多摩っ子にTAKA-Qが蔑まれたのと同じく,むげん堂の洋服はその頃,「インド野郎」と一括りにしたクラスの制服でしかなかった。

人民服は恰好よくて,インド系はダサい。1980年代半ばのこの感覚を文字にするのはなかなかむずかしい。何せその頃,インドとラスタさえ混在していたのだ。まあどちらも私たちにとってはフィジカルすぎに映ったから区別する必要はなかったのだろうが。

フィジカルなものはリアリティを引きずるから,ノンフィジカルなものに架空を憧れる。そうやって徹頭徹尾,架空に生き得ることの可能性を感じた数年間が,たぶん80年代の半ばにあったのだ。

徹にとって人民服と人民帽はノンフィジカルの象徴だったのかもしれない。

WORLD HAPPINESS 2017

前回は広い会場の後ろ側「Bエリア」チケットしか取れなかった。今年は早めに申し込み,「Aエリア」のチケットを確保した。

ところが,会場の広さはこれまでの半分,Webには1/3との書き込みもあった。結果,「Bエリア」でも大して変わりはしなかったものの,まあ,ステージからかなり近い距離でライブが観られたのはよかった。

とりあえずステージ前のエリアの左中ほどに場所を確保した。これで,レフトステージの演奏も移動せずに見られる。ただ,とにかく暑い。演奏が始まるまで1時間ほどあるものの,シートの上に置いたリュックサックが数分で熱くなってくる。iPhoneを中に入れたままにするとヤバそうだったので,ポケットに押し込んで,アルコールと水を仕入れに行くことにした。

開会宣言前に岡崎体育のステージでプレオープンした。適当に客をいじりながら,快調に飛ばしていく。この時点ですでに暑くて暑くてたまらない。

高橋幸宏といとうせいこうの開会宣言は,1分間の黙祷で始まった。静まった公園に風と飛行機の音しか聞こえない。長い1分間だった。

コトリンゴは,ジャズバンドフォーマットでスタート。矢野顕子というよりも原田郁子や大貫妙子を思い浮かべた。途中で,映画「この世界の片隅に」で主人公の声を務めた俳優・のんが登場し,映画でも使われたフォークルの「悲しくてやりきれない」をデュエット。よい塩梅に嵌っていた。30分のステージはかなり聴きごたえがあった。

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