童夢


高校時代の友人と30年ぶりに飲んだときのことだ。

最後に話したときは『気分はもう戦争』が出たばかりで,新星堂の本売り場,小説コーナーのや行あたりを眺めていた私を偶然,通りかかった友人が見つけたのだと思う。私は矢作俊彦の小説を眺めていたのだ。ただそれから実際に読み始めるまで,どうしたわけかしばらく時間があった。

だから,私と友人の間で最新の漫画は『気分はもう戦争』で,それ以降,漫画について話した記憶どころかまったく事実がない。

石森章太郎のコマ割りの凄さについて,酒を飲みながら話すことができたのは,だからそのときがはじめてだった。30年間忘れていたが,友人と漫画についてはやけに趣味が合ったのだ。

「石森章太郎以降で,大友克洋の『童夢』一コマ以外,すごいなあと思ったコマはなかったな」

「バストショットとせりふで物語をすすめるのが漫画だから」

「ほんとうにささいな一コマなんだ」

で,週末に実家へ戻り,『童夢』を探し出して見つけたのがこのページだ。左上のコマを初めてみたとき,心底驚いた。自分がエッちゃんになって,消防隊員に呼びかけられているかのように場面を描く。カットが団地のカタストロフィのなかにあるから,とてつもなくその効果が伝わる。『童夢』には有名かコマがいくつもあるけれど,強烈さではこのコマが一番だと今でも思う。

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