2月5日,会社帰りに芳林堂書店高田馬場店をのぞいた。受験帰りの家内,娘と待ち合わせたのだ。
エスカレータをのぼっていくと,新刊入庫遅れのお詫びが張り出されている。2,3日の滞りだから全体,いつもと変わらない様子だった。レジの近くで昌己夫妻と出くわした。
「あれ見たか?」
「見たよ。理由は書いてなかったけどな」
「写メ撮っちゃったよ」
昌己はうれしそうに笑った。もちろん,そう見えただけのことだ。
昌己夫妻がエスカレータを降りていくとの入れ違いに,反対側から家内と娘の姿が見えた。まるでコントのようだった。
数日後,ふたたび会社帰りに芳林堂書店に立ち寄った。まだ次の取次は決まっていないらしく,さすがに棚に空きが目だってきた。本を購入すると棚が空く,買わないと資金がショートするかもしれない。メモリ不足のサーバにアクセスしていいのか悪いのか思案しているみたいに棚を眺めた。とりあえず菊竹清訓の『代謝建築論』を購入した。足を運べばこういう本が棚に並んでいる書店は何をおいても応援する。その方法がはっきりしないのが悔しい。
新井薬師前に住んでいた頃は平成になったばかりで,バブルはほとんど終わりだったのだけれど,私にはバブルの恩恵も被害も何一つ受けた記憶はない。町並みにはその影響はあったのだろう。高田馬場駅前で羽振りがよかったのはレコードショップのムトウだった。本店に加え,その反対側の角の2階と,一時はビッグボックスの2階にも店を構えていた。
その頃の芳林堂書店の記憶は実のところあまりない。駅前から明治通りに向かう道の左右には覚えているだけでも3軒の書店があったし,もちろん芳林堂書店の池袋店が店を開いていた頃のことだ。ビッグボックスの2階には小さいながらも三省堂書店さえあった。今よりも芳林堂書店高田馬場店の必要性は正直,なかったのだ。
それから数年,21世紀へのカウントダウンが始まる頃になると,ムトウは次々と店を畳み,21世紀に入ってしばらくして本店さえも消えうせた。同じように何軒もあった高田馬場の書店はいまや芳林堂書店高田馬場店をのぞくと,西口のあおい書店だけになってしまった。
昨日,久しぶりに中古レコード店タイムをのぞこうと思ったところ,閉店していた。昔はあの少し先にレコファンもあったのだけれど。
なおさらに芳林堂書店高田馬場店は何とか続いてほしいのだ。