幽霊たち

19時くらいまで事務所で仕事をする。仕事も家のほうも,やりのこしていることばかりあるようで,気が散ってしまう。

アクションリサーチを契機にポール・オースターの『幽霊たち』(新潮文庫)を取り出し,しばらくぶりに読み返している。

自分がブラックのことを身近に感じれば感じるほど、ブラックについて考える必要がなくなるのだ。言いかえれば、自分の職務にのめり込めばのめり込むほど、彼は自由になるのである。相手と結びつくことではなく、相手から隔たることが拘束を生む。

池袋駅あたりで一杯飲みながら続きを読もうと思ったものの,タイミングを殺がれ,高田馬場まで行った。しばらく前,HUBに変わってしまったパブでジントニックのダブルとピクルス。オリンピックのサッカーが放送されていた。店のなかの様子はまったく変わらないし,がちゃがちゃ煩い店員に遭遇しなければ,以前とそれほど変化ない。ただメニューにハギスがないのがつまらない。

矢作俊彦はポール・オースターの小説をハードボイルドとしてはもちろん認めないし,ありがたがる輩にも罵声をあびせかけたけれど,だからといって読まずに済ますのは惜しいと思う。主人公が心情吐露する様と,にもかかわらずモラルはからっぽなあたりが気に入らないのかもしれない。いや,モラルはあるのだけれど,独りよがりの善意が見え隠れする。『幽霊たち』を読み返していると,そうしたことよりも先に,短いセンテンスが心地よく,巻き込まれ具合が愉しい。

20時を過ぎたので店を出た。ブックオフで福永武彦,辻邦生のエッセイ集と他数冊を買って家に帰った。  

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