話はない

夕方,出来上がった本を届けに虎ノ門に行く。帰りに虎ノ門書房で浅羽通明『「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するか』(ちくま新書)を買い,渋谷に向かう。道玄坂の王将で早めに夕飯を済ませて,ライブハウスO-nestに。HAPPYの7inch 発売記念ライブ。家内,娘もやってきて5階にあがる。

O-nestには初めて来た。娘は友だちのライブを見に一度来たことがあるという。ビルの5階が受付で,ワンフロア降りたところがフロアになっている。250人程度のキャパシティで,ビルの4階だから当然,天井が低い。昔の新宿ロフトを少し小さくしたような感じだ。ドリンクチケットを缶ビールに換えてライブを待つ。まだ60人くらいの入り。

3バンドがそれぞれ1時間弱の持ち時間のようで,最初に登場したのはJappers。ギター2本のほかにスチールギターが入り,キーボードにリズム隊という編成。ギターは交換したりして,アコギ1本+エレキ2本になったりもする。キーボードは白玉を押さえるくらいで,キーボード的な役割はスチールギターが担当しているようだ。歌詞は英語,ブリティッシュロックテイストはHAPPYに通じる。最後に続く流れで,テレビジョンの“Marquee Moon”風絡みから始まる曲が鳴った。ところが,リズムが早急に変わり,いつの間にかJoy Divisionの“Transmission”風に。そういえば,ドラマーの叩き方はスティーヴン・モリスに似ている。最後の曲のバスドラの音なんて,もろそのまんまで恰好よい。こんな機会でもなければ聴くことはなかっただろう。

次は,踊ってばかりの国。後で検索したところ,メンバー交代したばかりだそうで,左右2本のギターがまだバンドにしっくりなじんでいないように見えた。音は別として。フィッシュマンズやボ・ガンボスを思い出すという書き込みを見た。確かにそうなんだけれど,実はどちらもあまり好きではない。ライブを見たことがなかったからなのかもしれないが。ところが踊ってばかりの国はとてもよかった。下津の目つきは昔の町田町蔵みたいにギラついている。「デイ・ドリーム・ビリーバー」を換骨奪胎したかのような「話はない」をナマで聴いたら,このバンドのファンになってしまうのは当然だろう。家に戻ってから,あれこれチェックした。この体制でバンドが続くことを祈る,切に。

トリはHAPPY。踊ってばかりの国の後に登場すると,なおさらにメンバー相互のコミュニケーションのよさを感じる。このバンド,何度か見たが,結局,ベースの鬼のような安定感が肝なのだ。音がぶれないし,力強く響く。“Lucy”などとともにリリースされたばかりの新曲や,出来立ての曲も披露されて,このキャパシティで見られるのはいつまでなのだろうかと感じるくらいのステージだった。英語の歌詞は,ドメスティックで勝負するにはリスクなのだろう。アンコールに応えて,ライブは終了した。

HAPPYはワンマンよりも,今回のような対バン企画を増やしてほしい。

娘はまだギリギリ10代だから違和感ないものの,家内が娘にくっついて最前列に陣取ってしまったのには唖然とした。どのバンドにとっても,最前列最長年齢記録を更新したんじゃないだろうか。踊ってばかりの国の“OK”で,下津がバーに足をかけたんだけど,リフトに行くんじゃないかと一瞬危惧した。私のまわりは群れからはぐれたかのような男ばかりだった。段差の上,スピーカーの前だから,とてもよい位置で見られたのだけれど。

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