Decade

石森章太郎のマンガ版『ロボット刑事』が刊行されたのは1973年から74年にかけてのことだ。3,4年後,私がマンガを熱心に読み始めた頃,書店の棚に『ロボット刑事』をみつけることはできなかった。講談社のマンガでは『スカルマン』『リュウの道』は新刊を目にしたものの,石森章太郎のマンガでさえ数年で流通されなくなることがあたりまえだった。その感覚をときどき思い出す。

たぶんサンワイドコミックスで1970年代初めの石森章太郎のマンガが復刊される少し前だったと思う。浦和東口の古本屋の軒先,50円均一くらいでカバーなしの『ロボット刑事』第1巻をみつけて購入した。刊行から10年を過ぎて,初めて実際の本を手にしたことになる。読みたいマンガをそのくらいのスパンかけて探す感覚は,もしかするとその後,失ってしまったかもしれない。

しばらくすると,『ロボット刑事』はサンワイドコミックスのラインナップに加わり,最終回まで読むことができるようになった。サンワイドコミックスの最大の功績はこの『ロボット刑事』が読めるようになったことと,『イナズマン』第3巻に「超人戦記」が初めて収載されたことだと長い間,思っていた。桜多吾作版『マジンガーZ』だとか平井和正・桑田次郎コンビの数編だとか,他にも功績はあるとはいえ。

で,平井和正・桑田次郎コンビはさておき,10年くらい前に発表されたマンガを収載すことが貴重だった感覚も同じく忘れられない。たった10年なのだ。

P-MODELのアルバム“Perspective”をリリース後,2年ほど経って探そうとしても,レコード店の棚で見つけることができなかった記憶と相俟って,本にしてもレコードにしても,継続して新品で手に入れることができるものと,そうでないものとは,昔からあった。記憶のかけらさえあれば(ものによっては加えて対価),いまのほうが探し物を手に入れることは容易くなったように思う。

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