ビッグ・スヌーズ

矢作俊彦の「ビッグ・スヌーズ」は連載のなかできちんと謎が解けつつあって,これがなんだか新鮮な感じを覚える。思えば「フィルムノワール/黒色影片」は連載後半,リアルタイムで読まなくなってしまい,「チャイナマンズ・チャンス」は途中から別の話にすり替わった(すり替わった話はきちんと畳まれてはいるが,大島渚の映画よろしく,同じ場面が繰り返された気がする)。「ルッキン・フォー・ビューティ」はまとまっていた記憶がある。デバイスでは読みづらく,後半はほとんど覚えていないものの。一方で『引擎/ENGINE 』単行本化の際に使われた場面があり,もう一方で「チャイナマンズ・チャンス」の初っ端,つまりは「ビッグ・スヌーズ」の出だしと同じ場面が用いられたりして,謎が解けたという感じはあまりしなかった(「ビッグ・スヌーズ」について書き始めると,いつも似たようなエントリーになってしまう)。

「常夏の豚」は最後,きちんとまとめに入っているけれど,最終回の前半は「眠れる森のスパイ」だったはずだ。この小説家の作品でそれは大したことでない。で,「ビッグ・スヌーズ」は「NAVI」連載の長編2作以来,久しぶりに連載時に話を畳んでいる感じを受けた。「ウリシス911」と「あとは沈黙の犬」はパッチワークにしては見事だった気がする。あれをまとめないのはなぜだろう。

で,「ビッグ・スヌーズ」だ。もうひとつ,今回,二村が傷を負うところに驚いた。これまで萬金油で直るくらいの傷しか受けていなかったはずの主人公が,今回ばかりはかなりの衝撃だったはず。次回作を期待してしまうのだけれど,どのような姿で登場するのか興味がそそられる。

『マイク・ハマーへ伝言』で翎は,あらかじめ傷をもった者として登場するな。

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