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ソロになってから30年を越えたというので,いまさら振り返ることではないと思うものの,平沢進がソロ活動を始めたあたりからの変遷をたどると,それはどこか平井和正に似ている。私が平井和正の小説をリアルタイムで追ったのは「真幻魔大戦」が始まる少し前,「悪霊の女王」が出てしばらくした頃だったと思う。

芳行はどうした徳間ノベルズが好きで,まあ,筒井康隆ファンだったから当然とはいえ,出たばかりの「悪霊の女王」を彼にしてはかなり褒めたような気がする。私はまだ平井和正の小説を読んでおらず,アダルトウルフガイシリーズが角川文庫にはじめて収載された「人狼戦線」を読んだくらいだったはずだ。以前,書いたかもしれない。

「真幻魔大戦」が始まり,「新幻魔大戦」が刊行され,「幻魔大戦」連載のアナウンスが出た。芳行は「人狼白書」を酷評した。私が「幻魔大戦」シリーズに手を伸ばそうとすると,「面白くないよ。それよりも『狼の紋章』『狼の怨歌』『狼のレクイエム』を読んでいないなら,そっちを読めよ」と的確な助言をもらった。的確だと気づくのは数年後のことだ。ザ・ビートルズを聴きはじめるならと尋ねると,すかさず「サージァント・ペッパーズ」,これも的確な助言だった。私は「レット・イット・ビー」や「アビー・ロード」を推さない彼の判断を訝しんだ。訝しむのが間違いだったのだ。彼はどれも,先に作品を体験した者として妥当な作品を選んで教えてくれたというのに。

その後,「地球樹の女神」がカドカワノベルズで刊行されたあたりに,もう一度,平井和正を読むことになるものの,その後は古本屋で見つけてはページを捲り,そのつまらなさにわずか100円でさえも出すことをしなくなった。2000年前後,どこに出張に行ったときだっただろう。夕食後に町場をぶらついて見つけた古本屋に「バチガミ」が300円くらいで置いてあった。曽根崎新地にあった3フロアくらいの古書店だったと思う。その地下のマンガコーナーだった気がする。ビジネスホテルに戻り,ビールを飲みながらページを捲る。メガビタミンだとか健康志向が鼻につく。「地球樹の女神」につながるテーマもあったかもしれないが,一缶空けて読み終えると,翌朝,本をそのままにしてチェックアウトしてしまった。

その頃の感覚をときどき思い出す。平沢進が今世紀に入ってから辿る紆余曲折は,どこか平井和正をトレースしているように思えるからだ。

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