天日坊

久しぶりの観劇。もしかすると前々回のコクーン歌舞伎以来かもしれない。

そんな具合だからだろうか,「切られの与三」と二部構成のように全体,思われた。「切られの与三」が全体,夜を突っ走り(BGMもストーンズの引用があったし)最後に日が昇るといった構成だったのに比べると,「天日坊」はロードムービー,もとい悪党道中記をロードムービーがなぞらえたのだろうから,道中記のような構成。

「俺は誰だ」が通底するテーマだろうけれど,これは「切られの与三」にも感じた。串田和美さんとそのまわりの演劇をみると,「俺は誰だ」がしばしば現れる。出自以外m「誰」を規定するものがないというのがもどかしい。「ぼくはぼくだからぼくなんだ」という「こどもの論理」を武器に日活アクション映画のあだ花が開いたと矢作俊彦は書いたはずだけれど,「俺は俺だ」はここではギャグにしかならない。

「切られの与三」に比べるとスラップスティックな印象ではあるけれど,それゆえに自分をみずから規定できない市井の弱さを露呈させる。それは特別ではない。まったく,私の物語だ。

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