一男

原ではなく,島田。

相変わらず,古本屋で島田一男の文庫や新書を見つけると買ってしまう。先日,出張で京都に出かけた際,軒先の均一棚で新書3冊を見つけたので買って帰ってきた。文庫でもっているものが1冊あったけれど,それ以外の2冊をコロナで療養しているときにだらだらと読み進めた。捜査官シリーズの新書で,そのうち一冊は最初のページからしばらくなんだか不吉なシミというかヨゴレ(なんだか薄い血糊のような感じ)があって,さっさと読み飛ばしていった。もう一冊をこの前読み始めたところ,最初に登場した犯人は途中で殺されてしまった。後は殺した2人がいかにお互いを先に始末するかで物語が進み,最後まであっという間に読み切ってしまった。

捜査官シリーズは警察側から描かれることがほとんどで,犯罪者に加担できるような描写はあまりないものの,構成自体は凝ったものが少なくない。キャラクターはいつもの島田一男の小説に登場してくるパターンだから深みや重さがないのが好き嫌いわかれるところだろう。

キャラクター設定にもう少し趣向を凝らすアイディアをもっていたならば,島田一男の小説はもっと耐用年数があったように思う。というか,小説としての構造をいただいて,今風のキャラでデコレーションすれば読まれそうな気がする。日活アクション映画に対する矢作俊彦の小説のような立ち位置で創作する者が現れはしないだろうか。

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