辻邦生

神保町の古本まつりに出かけたのは数年ぶりのこと。救世軍の前あたりの出店が他の場所に移っていたけれど,何ともにぎやかな雰囲気だった。 マルティンベックシリーズ4冊,篠田一士,山川方夫,松下竜一,アリス・マンローあたりを手に...

引擎

少し前,矢作俊彦の『引擎/ENGINE』ハードカバー版第3刷を古本屋で見つけた。「増刷で手に入れた」と読んだ記憶があるので,探していたものの,初刷を探すよりむずかしい。 風邪気味だったので,書棚から初刷を取り出して,枕元...

人の顔

数年前,デイサービスの管理者さんから伺った話。竹内敏晴さんにお話したかったエピソードなのだけれど,それに加えて,現任教育の必要性だとか,もろもろ思いめぐらす。 ある朝のこと。 近づいてきたエンジンが止まった。彼が利用者の...

電線

やがて電気が来た。真っ先に戯台に電灯がともった。 灯りより電線が彼に希望を与えた。電線にはひとつの確かな行き先があった。道や川と違って、必ずどこかと繋がっていそうだった。 休日、彼は屋根を修繕する材料を採るふりをして、斧...

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