踊ってばかりの国

中野サンプラザで踊ってばかりの国のコンサートだった。コクトーツインズの来日コンサートに足を運んで以来,何度目になるだろう。キング・クリムゾンもくるりも観たけれど,小原礼の不思議なソロコンサートの印象が強烈だった。

17時に仕事を終える。落合まで歩いていこうと思っていたものの,非道い雨なので大江戸線で東中野まで行き乗り換えることにした。物販でパーカーを買ってから寒いので2階で時間を潰す。娘と家内がやってきて,軽く食事をするというので開場をひとりで待つ。

少し遅れて入る。0番の後ろ,3列目少しだけ左というかなり見やすい席だった。那智君が来ているというので探しにいくと,すぐに見つかった。少しだけ話していると,どうやらジェントル・ジャイアントの曲が流れているようだ。

19時にコンサートが始まり,2時間。ライブハウスとは違う意味で音はよいし,ステージ映えもする。P-MODELが久しぶりにRNホールでコンサートをしたときに比べるまでもないけれど,踊ってばかりの国はもっとホールでコンサートを続けたほうがよいと思った。動員のハードルはあるかもしれないが,ホールでコンサートを続けるなかで,ホールなりの流れができてくるように思う。

ここ数年の踊ってばかりの国のライブは,あえて曲の流れで聴かせないかのような順番で演奏されることが多い。曲は揃っているのだから,そろそろ,起承転結をつけて演奏してよいのではないだろうか。今回は前作と最新ミニアルバムのリリースツアーの意味があるので,そのあたりをメインに選曲されたのだろうけれど,それでももう少し変化のつけようがあるだろう。それは可能性だ。

終演後,那智君と落ち合い,ハラーズに流れた。この店,一時,別の店になったように思ったものの,30年近くまえ,弟と入ったときからそのまま変わっていない。あれは勘違いだったのだろうか。23時過ぎまで飲み,別れる。新井薬師前まで歩き帰宅。

郊外

小田急線が事故か何か知らないが動いていないらしい。急遽,田園都市線経由で仕事の待ち合わせ場所に向かう。

田園都市線というのは,三軒茶屋にでも用事がないかぎりほとんど乗ることがない。溝の口から先はあえて乗ることなくても事足りる(駅前に仕事に関する場所がない)ので,数年に一度,乗ればよい方だと思う。それが急なことであざみ野に降りた。5,6年前,駅前で打ち合わせ,そのあとブックオフに寄った記憶が蘇ってきたものの,町の様子はまったくわからない。

バスに乗り換えて山を切り開いてつくられたと思しき景色を眺めながら,なんだか大阪の郊外っぽいなあと思う。阪急で北東に向かう感じととても似ているのだ。東急沿線はどこか阪急沿線と重なるところがある。どちらも苦手な景色だ。丘陵地帯をかき分けて線路が敷かれ,それに並行して道路と両側に店が並ぶ。とはいえこらえ性はなく,すぐに緑が多いといえば聞こえがいいものの,閑散とした景色になる。しばらくすると,先ほどと似たような景色が現れる。

結果,これまでの半分近くを西武線沿線で過ごすと,そうした光景をよそよそしく感じるのだ。

帰りは向ヶ丘遊園駅まで出た。ここの駅前が無茶苦茶,再開発らしい力業で過疎化していることに驚いた。

悪所

インタビュー原稿の整理をさすがにしなければならない。まだまだ粘土を用意し,大きく削ったあたりの段階。校正作業を済ませ,少しずつ形をつくる。

土曜日は家内と待ち合わせて中野まで行く。少し買い物をしてオリエントで夕飯をとる。新井薬師前駅の文林堂書店を久しぶりに覘く。と,家内が30%オフだと知らせてくれる。10月2日で閉店するのだそうだ。とりあえず,文庫2冊を購入し,明日再びくることにした。

平成のはじめ,弟が日本を離れた後,彼の代わりに上高田のアパートに住んで早々,文林堂書店を定期的に利用するようになった。文庫とマンガがほとんどで,ときどきハードカバーを買ったものの,不思議なことに,この店のハードカバーの内容は突っ込んだところがないものが多い。とても私の読書傾向に似つかわしいものだった。

2年ほどで実家に戻ることになり,通うことはなくなった。大泉学園に住んでいた頃,一,二度来たことはあったかもしれない。四半世紀前,中井の近くに越してきてからは,以前ほどではないにしても,会社帰りや休日,ときどき利用した。少し前,岩波文庫の『与話情浮名横櫛』が安くで売っていたのを買ったときは,このあたりのラインナップもあるのかと思った。辻邦生の『春の戴冠』一冊本を買い,事務所を借りたときに,毎日少しずつ読もうと思ったものの,なんだか忙しくなって,習慣化する前に書棚に並べたままになってしまった。

古本屋はもともと悪所で,聖人君主が集う場所でも営む場所でもない。悪所だけれど町場にあり,何らかのメッセージを発信したり,ひそひそと好事家が集まったりする。聖人君主が敗れた図式だから,閉店が残念だというのでは決してない。町場の多様な姿が,駅前再開発の名のもと,小奇麗になるであろうことにため息をついてしまうのだ。

日曜日は事務所で仕事を少しすませ,午後から家内と文林堂書店に向かった。昼休憩中で,店頭をしばらく眺め,店内に入る。古ツアーさんの姿が目立った。石森章太郎の『ジュン』と内田百閒の『昇天』,『ナイチンゲール書簡集』を買った。『ジュン』は数年前から買おうかと迷っていたものだ。刊行当時,たぶんその頃,私が買った本のなかで一番高かったそれを,ていねいに読み進めたことを思い出す。親が江戸川に転勤になって以降,あのあたりの空気の悪さのせいで本が軒並みダメになってしまった。それでも老後,印西に引っ込んだ両親のマンションにまだ残っていたように思う。

マンションを処分したとき,江戸川でダメになった本はほとんどゴミとして出さざるを得なかった。『ジュン』もそのなかにあったはずだ。

文林堂書店の店頭で『ジュン』を見つけたとき,再びこの本を手元に置いておきたくなった。結局,このタイミングで買うことになるとは想像していなかったけれど。

9/29

棚卸のため午後から所沢の倉庫まで行く。

西武池袋線への乗り換えは所沢だったか新所沢だったか勘違いしてしまい,航空公園駅まで行き折り返す。秋津で昼食をとり,倉庫まで。諸々の打ち合わせを含め夕方に終わる。田無のブックオフに寄り,文庫2冊購入。事務所に18時前に着く。それからメールの返事など済ませて20時半くらいに帰宅。

まずは最初の決算に必要なデータを揃える必要がある。あとは税理士と調整して,初年度をどのあたりでまとめるか,だ。

Web会議

土曜日はWeb会議。20人以上のWeb会議を進行したことなど,これまで経験がない。Google Meetの使い方さえあまり把握していないとくる。13時過ぎ,出張で都内にこられた方がwifiをもとめて事務所に。それから2時間ほど,なんとか無事に終わった。

出張帰りの方と1時間ほど打ち合わせ別れた後,家内と待ち合わせて高田馬場へ。28回目の結婚記念日ということでアフタヌーンティーの豪華版を夕飯代わりにしようと予約した。きれいに彩られたスイーツ+若干の食事は,普通のコース料理よろしく食事からとっていくと,後に控えたスイーツが食べきれない。そのことに気づいたのは食事を食べ終えてからだった。2時間ほどで,それでもおいしくいただいた。

ここ数日,数年ぶりに普通の風邪に罹ったかのような感じで,日曜日は朝食をとったあと,しばらく横になる。14時過ぎに起き,事務所で決算の続き。17時半くらいに家内と待ち合わせ,田無まで買い物に出かける。ブックオフで本を買い,アスタ地下で果物などを買ってから,外食して帰宅。

書き留めていない日のことは片っ端から忘れていくので,月曜日は,一日事務所で仕事。編集の仕事が佳境に入っているものの営業関係の仕事が不意に飛び込んでくる。21時近くまであれやこれらで事務所にいた。

火曜日も当然,似たようなもの。ただ,夕方,デザイナーに届け物があったので18時過ぎに事務所を出でそのまま直帰。井荻でデザイナーと待ち合わせ,渡し終えた後,高田馬場まで行く。芳林堂書店を覘き,日高屋で休憩してブックオフに。文庫本3冊を購入し,歩いて帰宅。少し前に総理をやっていた人物の式典の日。亡くなってから2か月以上,この日のためだろうにいまだ納骨を終えていなかったと思しくあきれてしまう。誰も望まない凶事をすすめてしまうものを少しだけ想像する。それは亡くなった人物が生前,強いたという忖度(まあ,強いる筋のものではまったくないので似て非なるものであろうけれど)のなれの果てではないかというのが,とりあえずの感想。当然,式の映像を目にすることはない一日だった。

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