劇画

「ゴルゴ13」を読んでいると,ストーリーはさておき,古くからの“劇画”の表現形式がここ10数年,すっかりなくなってしまったことに気づく。同じマジックを使って描いた線が,まるで意味を違えて見えてくる。良くも悪くも“劇画”のイメージから遠く離れている。まったく普通のマンガだ。

ゴルゴ13

ここ数か月,さいとうたかをの「ゴルゴ13」を新古書店で買っては通勤途中に読んでいる。

石森章太郎が「ビッグコミック」に「さんだらぼっち」を連載していたころが,リアルタイムで手に取った最初期で,そのころからつい最近まで「ゴルゴ13」を読もうと思ったことはほとんどんなかった。きっかけは何気なく「シュガー」を買って読んだところ,この軽ハードボイルドっぶりが暇つぶしにはとてもよかったのだ。

で,80年代以降の「ゴルゴ13」をコンパクト,コンビニ本を読み始めたところ,あの緩さに感覚が慣れてしまった。

かなり手に入れたのだけれど,連載から40数年,2種類のオムニバスを適当に買っても,いまだ重複した話はいくつもない。

精神

世田谷美術館で「アンリ・ルソーから始まる 素朴派とアウトサイダーズの世界」,相田和弘監督の映画「精神」を見てきた。古賀春江を見に行った1993年以来,いやダーガーを見に行った記憶もあるのだけど,それでも10数年ぶり。

「精神」はとても懐かしい記憶がよみがえってくる映画だった。私のマンションの管理組合設立会をした同じ敷地内にある高良興生院は,映画に登場する診療所にとても似ていたし,昭和60年代に2年間ほどアルバイトした精神病院で出会った患者さんが,まるでそのまま画面に登場してきたような感触。

一番興味深かったのはドキュメンタリー映画であるにもかかわらず,全体,「なぜ」という問いが,とても希薄なことと,にもかかわらず,その場にいる方への自然な関心が感じられたこと。上映後の相田監督が,世の中のスムーズな成り立ちに対し,患者さんはなぜ,どうしてと考えているというようなお話をされていたことで,そのあたり腑に落ちた。

「なぜ,どうして」というあなたへの関心は,日常の動きを止めてしまう。「なぜ,どうして」を発しないあなたへの関心のもちかたがあるのだなあ,と。

最初にBGMやナレーションを入れない観察映画で,でも開始早々,登場する方がくるりの「ハイウェイ」のCDをかけていたのは思わず,のけぞってしまった。来週,家族そろって今年4回目のくるりのライブに出かける予定。

公式サイト

ビール

神楽坂のラ・カシェットにはじめて出かけたのは7,8年くらい前のこと。平成の終わりに赤目の合宿で一緒になった編集者と,その後,同じ事務所で仕事をすることになった。しかし,仕事場が重なったのは1年程度だ。彼は退職した。

同僚だった時期にはほとんど酒を飲みに行ったことはない。彼が退職を決めたときに連絡があり,麻布十番で飲んだのが初めてだったと思う。彼が筋金入りのアマチュアフォークシンガーだと知り,仕事の話そっちのけで音楽のことばかり話した。

彼が移った会社は四ツ谷にあった。ベルギービールが好きで,近場で飲める店を探していて見つけたのがラ・カシェットだと聞いた。

ある日,メールが入り,店で待ち合わせた。種類が豊富で,敷居の低いのも気に入った。それから何回か,その店に彼と飲んだ。話はほとんど音楽の話だった。

昨日,数年ぶりでラ・カシェットで飲んだ。仕事の仲間とあれこれ話すうちに,ほんとど0時近くになってしまった。

9

くるりのライブでギターを弾く岸田繁をみるたびに不思議に思っていたのは,8ビートをダウンストロークで弾くときにからだを横に揺らしている姿だった。タテ乗りのに3連譜でリズムをとっているような塩梅で,それが心地よいバンドの揺らぎにつながっているのだろう。

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