週末

土曜日は昼前に事務所へ行き事務仕事を少し。午後,家内と待ち合わせて朝霞台まで行く。「坂口尚 高寺彰彦原画展」。朝霞台には30数年前,隆史に紹介された大学模試のバイトで一度だけ来たことがある。今回,それが東洋大学だったことを思い出した。そのとき駅前で,当時アルバイトしていた精神病院に長く入院していた患者さんと会った。「どこかでみたことがある顔だ」と洒落っ気なく,ただただ独り言ちる様子が通りすがりに目に入る。

病棟で赤マーク(調子が悪いため要注意。病棟以外の出入りはカウンターで止める方)だったにもかかわらず,「果物剥くからナイフ貸して」といわれ,考えもなしに渡したとき,穿つように私を見る目をしたその患者さんだ。そうみえたのは私の偏見ゆえだったのかもしれない。ふつうに貸して,数分後,あたりまえに返しにこられた。返しにこられたときにも,同じく顔色を値踏みされたように思った。

朝霞台の駅前はどこかの駅前と似たように開発されていた。駅前の喫茶店に入り,少し遅めの昼食をとる。やや遠回りして会場に入る。

坂口尚の原画を見るのは数回目になる。見るたびに,すごいなあと思うとともに,今回はつい左手を動かして模写したくなってきた。なぞってみたくなる線の魅力。高寺彰彦の原画もすごい。大友克洋門下というか,今敏にも共通して,登場人物の表情が独特だ。好き嫌いはさておき,デッサン力のすごさが伝わってくる。

1時間ほど見て,帰りに単行本3冊を購入して会場を出た。ブックオフがあったので寄り,2冊購入。昼に入った喫茶店でコーヒー豆を買い池袋に戻る。夕飯用にお弁当を購入して帰宅。

日曜日は,ひばりが丘まで墓参に出かける予定。義父の誕生日近くだったと思う。事務所で1時間ほど発送の準備とサイト更新をして家内とひばりが丘まで。途中,練馬で買い物をし,デンマークで昼食。16時過ぎに墓地に着いた。あたたかい。墓を掃除し,線香をあげる。近くの喫茶店で休憩。田無まで出て,私はブックオフに。2冊購入。家内と待ち合わせ,買い物をして帰宅。

島田一男『島田一男大陸小説集1 軍報道部』(大陸書館)が届く。

3/10

午前中は今月後半からはじまるプロジェクトの準備。自分の写真を用意する必要がある。昼に自宅へと戻り,昼食をとる。着替えて事務所でいわゆる自撮り。勘所がわからない。この10年,自分の顔が映った写真で使えるものなどほとんどないのでしかたないけれど,いったいどれくらい写したかわからなくなってきた。14時過ぎ,これ以上,撮影してもしょうがないと判断して,写真データをひっくり返し,2葉を選び,少し加工する。

発送の準備と請求書の作成。夕方からプロジェクトのサイトページを修正。ふたたび発送準備をして20時くらいに帰宅。

写真データをひっくり返すと,なんとか使えそうなものは11年前,東日本大震災後に,仕事で京都に出かけたとき,家内,娘と一緒に撮影したものくらいだった。京都で仕事をしている丘野君と息子さんと円山公園で待ち合わせて食事をしたときのものだ。

大阪で集まりの取材があったので,震災1週間くらいの時期,もろもろ不安を抱えながら家族と京都に向かった。知恩院の旅館に宿泊したその前後の感触をいまも思い出す。

ビッグ・スヌーズ

伊野尾書店で「新潮」4月号を手に取りページを捲る。「ビッグ・スヌーズ」最終回とある。購入し,近くのパレスチナ料理店で昼食をとりながら読んだ。15時から打ち合わせで西日暮里のルノワール。17時過ぎに終わり事務所に戻る。夕飯のおかずを買って帰宅。

まずは「ビッグ・スヌーズ」だ。

連載中,一貫して小説の強度が落ちなかったのは「常夏の豚」以来ではないだろうか。「常夏の豚」でさえ,最後のあたり,編集部との軋轢があったのだろうか,旧作を組み込んだりしたので,きっちちと終わったものとしては「悲劇週間」以来かもしれない。「悲劇週間」はおもに,全体を刈り込んで軽くした後,単行本化されたので,今作もそのような段取りになるのかもしれない。

前作『フィルムノワール/黒色映片』は後半,連載を追うことを断念してしまった。前半は無茶苦茶面白いのだけれど,香港に行ってから物語がマジックリアリズム風に展開し,混乱してくる単行本は前半だけを繰り返し読んだ。

くらべて「ビッグ・スヌーズ」の何とカチッとした構成具合。旧作から出張ってきたキャラクターはもとより,若者の描き方がとくにすばらしい。ある若い登場人物の場面など,(誉め言葉としての)まるで映画みたいだ。彼が対峙したものを描いた場面はもしかすると,矢作俊彦が描いてきたいくつものすばらしいカットのなかで一番かもしれない。

感想を少しずつ書き溜めることにする。

Birthday

先日のくるりのライブで久しぶりに”Birthday”が演奏された。そんなことを思い出しながら誕生日を迎えた。

午前中,事務所で仕事を済ませ,11時過ぎに大江戸線経由で築地まで出た。新刊を届け,そのまま赤坂の弁護士事務所を訪ねる。予定していたこと,していなかったことあるけれど,何とかなるかもしれないと思いながら打ち合わせを終える。事務所に戻り,仕事の続き。仕掛だった本のデータを揃えて,進行を受けてくださりそうな編集者に渡す。18時くらいに事務所を出る予定が,留守電の確認を忘れてとりあえず対応。

目白まで行き,家内が予約してくれたレストランで夕飯をとる。四半世紀以上前,このレストランがあった場所は画材店で,2階がレストランだった。うろおぼえだけれど「MADO」という名だった気がする。娘が生まれる前,一度,その店で誕生日に夕食をとったことがある。画材屋の手前を折れ,店のつきあたりでしつらえた階段を上がるとレストランはあった。細長い店内は柱の都合なのか,左側の壁が一か所出っ張っていて,店を2つに割るような感じだった。

四半世紀ぶりに訪れたレストランは2階から1階と場所は違えども,記憶を蘇らせるに十分な佇まいだ。いや,まったく違う店なんだけど,場に関する記憶というのがどうしても蘇ってしまう。

少し前からテイクアウトで利用していたこの店の店内で食事をとるのは初めて。フロア係は慣れていなさと一生懸命さで通すような案配で,家内は好印象。ワインからはじめて前菜,メイン,デザートとドリンクで2時間弱。おいしいコースだった。

高田馬場でブックオフを少し覘き,帰宅。テレビを観ていたら眠たくなってしまった。0時過ぎに就寝。

稼業

「染の小道」開催の3日間,事務所の軒先を利用して古本屋を開く。

第1日。金曜日なので仕事をしながらの営業。段ボール箱を数個,玄関先に並べて11時くらいからスタートした。法人をスタートしたときにはすでに暖簾の申し込みが終わっていたため,暖簾なしでいこうと思っていたところ,お隣さんが数年前の人気作を貸してくださった。竿を差すあたりは用意された事務所なので,ただ暖簾を出すだけで完了。

吉田健一のエッセイが最初に売れて,そのあと,吉野せい。染色の本が売れたくらいだっただろうか。メールを打ったり,電話のやりとりがあったりで,ただただ本を並べただけ。夕方に家内がきてくれたので遅めの昼食。

第2日目。午後から仕事の打ち合わせに出てしまうため,私は昼までの店番。休日だけれど,仕事はある。サイトにWEBマガジン用のデータをアップしたり,相変わらずのメール。午前中だけで2,000円と少し売れた。値付けの高い本を買ってくれた人がいたからなのだけれど。家内と娘にバトンタッチして本郷三丁目まで打ち合わせに出る。18時に戻り,簡単な片づけ。午後もそこそこ本が動いた様子だった。天気がよかったことも幸いしたのだろう。

第3日目。花粉症の薬の副作用で調子がよくない。本を出してあとは,事務所でからだを休める。事務所のなかを見にこられる方が意外と多い。薬を飲み,午後になると少し体調がよくなる。家内が15時前にきてくれたので交代。パンを買って自宅で食べ,少し眠る。16時過ぎに戻り,古本屋の続き。一箱古本市でお世話になっているレインボーブックスさんが覘いてくださる。同世代なので,読んできたものが重なり,話が通じてしまう気安さ。

18時前に店をたたむ。3日間で数十冊の販売,1万円くらいの売上になったようだ。レインボーブックスさんと,事務所で一箱古本市のようなものができないか話していると,できそうな気がしてきた。5店くらいはできそうな感じがする。車寄せを使わせていただくことができれば10店くらいは並びそうだし。

家内と東中野まで出て買い物。ブックオフを覘くが何も買わず。夕飯をとって帰宅した。

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