リンゴォ・キッドの休日


中篇「リンゴォ・キッドの休日」は,以下のような流れでわれわれの前に現れた。

  • 初出「ミステリ・マガジン」1976年12月号~1977年1月号
  • 単行本,早川書房,1978年7月(Fû-Meiの献辞付き/横木安良夫による著者近影。後の「スタジオ・ボイス」における横木のインタビューに,この撮影について触れたくだりがある)
  • 文庫本1,早川文庫,1987年11月(英文タイトル:Ringo Kid’s Holiday/解説:菅野國彦による矢作俊彦インタビューと思しき原稿を解説「煩雑な殺人芸術/シスコ・マイオラノス」として付記)
  • 文庫本2,新潮文庫,1991年12月(英文タイトル:Long time no see, Ringo Kid/表紙イラストは矢作俊彦)
  • 文庫本3,角川文庫,2005年5月(Fû-Meiの献辞付き/英文タイトル:Long time no see Ringo Kid/池上冬樹による解説)

また,単行本刊行時に,FM東京「音の本棚」で1978年7月31日~8月4日にわたる放送のほか,「七人の刑事」の第17回(1978年8月25日放送)に「サマー・ガール」のタイトルで原作として用いられるなど,メディアミックスにより展開されている。

いずれの書籍にも

警官にさようならを言う方法は
未だに発見されていない
――レイモンド・チャンドラー

のエピグラフが付されている。

雑誌掲載から単行本化・文庫本化の際に加筆・修正されたおもな箇所は以下の通り(注釈ないものは「雑誌掲載時」から「単行本化」の際の修正。随時更新予定)。

  1. Chapter2で二村が読んでいる新聞が「報知新聞」から「日刊スポーツ」に変更 1
  2. 二村の現場でのキャリアが「三年」から「六年」に変更。
  3. 公安部と刑事部の確執に関する記述の加筆。
  4. 後の文庫(角川文庫)化の際,「カプチーノ」を「エスプレッソ」に変更。
  5. 後の文庫(新潮文庫)化の際,週刊タイムスの記者の名を「梨元」を「有元」に変更。角川文庫版では「梨元」に戻される。
  6. ワーゲンが沈んでいた突堤の先端からの距離が「十五メートル」から「二十メートル」に変更。
  7. 港に入ったアメリカ空母の水平が溺れ死んだ場所が「葉山」から「観音崎」に変更。

このようにまったく同じ判は存在しない。特に最新の角川文庫版は,全体にわたって用字用語(例:そ奴→そいつ)に修正がかけられており,以前記したように音楽でたとえるとリマスター版である。

各文庫の特徴をあげると,早川文庫版は単行本をそのまま文庫化したもの。新潮文庫版は一部に手を入れた他,ルビがもっともていねいにふられている。角川文庫版は上記のとおりリマスター。

Notes:

  1. 最新作『フィルムノワール/黒色影片』に不足しているのは,プロ野球,それも長嶋茂雄への偏愛が失われてしまったことかもしれない。「リンゴォ・キッドの休日」から「ヨコスカ調書」に至る二村シリーズ第2期において,野球についての言説が,その人物造形に大きくかかわっている。

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