あ・じゃ・ぱん

読書会の課題になったので矢作俊彦の『あ・じゃ・ぱん』を角川文庫版で読み進めている。第一部,第二部を読み終え,第三部に入ったところ。

連載のときから第一部が強烈で,何度読み返しても第一部の印象だけが記憶に残る。刊行早々は感じたツギハギ感も,刊行後20年以上で何度読み返したかわからなくなってくると,それほど違和感がなくなってくるから不思議だ。

第二部のオーソドックスなハードボイルド小説の感じが,今回はとても面白かった。矢作俊彦が書くハードボイルド小説というのはつまりルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』のことなんだけど。

全体の2/3が他人の文章を引っ張ってきたとされているものの,風景描写などには矢作俊彦の文体や形容の旨さが感じられ,改変するにも才能が必要なのだと思いながらページを捲る。人物のリアリティを形づくるのではなく,人物を描く言葉のリアリティで読ませる小説なのかもしれない。20年以上読んできて今さら感じることではあるまいが。

この小説を書くにあたり,一文一文にインデックスをつけて組み替えていったとインタビューで読んだことがある。矢作俊彦の小説で,昔書いた一文がそのまま入っているのは,本書を書くときにつくったデータベースが活用されているからかもしれない。

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