一騎

数日前から右耳がときどき,ポコポコ鳴る。突難になる条件はほとんどクリアしているから,気配を感じると耳鼻科に行くことにしている。それで,ビタミン剤や鼓膜の動きをよくする漢方薬が処方されるわけだ。鼓膜の動きをよくする漢方薬ははじめて説明を受けたとき,なんてニッチなと思ったが,まあ必要な薬効ではあるのだろう。

クリニックの受付が18時までだと確認して,慌てて会社を出た。駅前の耳鼻科,診察券では水曜日の午後は休診になっているため,春日通りを挟んで向かいにある耳鼻科に行こうと思った。ところが信号待ちでチラッと耳鼻科の看板を見ると灯りがついている。なんだか診察していそうな雰囲気なので,急遽,この前受診したクリニックのビルに入った。

外階段を上がっていくと診察してはいるものの,おそろしい混み具合だ。まず,椅子が空いていない。加えて,埋まった椅子で順番待ちをしている誰もが,やたらと具合が悪そうに見える。咳き込むサラリーマン数名,母親が付き添う子どもさんはインフルエンザの確定診断をされそうな様子だ。突難かもしれないけれど,この待合室にいる間に,それ以外のいろいろいらないものがうつるのではないか? 立ったままで順番待ちして,かぜをもらうのは,どこか間違っていないだろうか。

とりあえず,診察券を出し,受付の看護師に「少し外に出ていていいですか」と確認する。ところが,「早めに戻ってこられますか」 ,返ってきたのは思ってもいない言葉だった。ざっと数えても私が受診する前に7人はいる。17時54分。あと10分程度で7人の診察を終えるのか,ここの医師は。ここで待ちながら,かぜがうつる確率を高めてどうしようというのだろうか。

しかたないので,1階にある薬局で,おすすめされた栄養ドリンクを飲み,数分で待合室に戻った。それから20分くらいが経った。そうだよな,あの人数の患者を診察するのに10分ということはあるまい。

とりあえず,右耳に明らかに耳垢をとる際についたと思われる傷痕がみえるという。ポコポコはこれが原因かどうかわからないが,まず,この傷の手当をしてみましょう。ということで点耳薬を処方され,18時半くらいにクリニックを後にした。処方薬局で点耳薬が出てくるまでさら20分ほど。

帰りに高田馬場のブックオフに寄り,斎藤貴男の『梶原一騎伝』(新潮文庫),川本三郎のハードカバーなどを購入。『梶原一騎伝』はペラペラ捲っていると,あっという間に100ページほど読み終えてしまった。ノンフィクションの読書体験はこういう感じだったなあ。平易な文章と緻密な取材,これがなかなかむずかしい。

梶原一騎が視界から総スカンを喰った頃,矢作俊彦がラジオで,「ぼくはこれまで,殺されるかもしれない覚悟で,梶原一騎の悪口を言ってきたんだぜ。その頃,編集者やまわりの野郎は『まあまま,そう言わずに。梶原さんにもいいところがあるんですから』とか言いやがって。そ奴らが手のひら返して『存分に悪口を言ってください』って言ってくるんだ。ぶざけた話だよ」と言っていた話を思い出す。

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