赤い公園

2曲目以降は最新盤から続く。小出のギターフレーズは津野を踏襲しながら,ところどころオリジナルを絡める。喪失によるオリジナリティと可能性。今回のライブを通して,このオリジナリティと可能性が何度も首をもたげる。オリジナリティとはもちろん津野の作曲・演奏であり,可能性とは曲が秘めていた許容範囲とでいえばいいのだろうか。「ショートホープ」の最後前,フリーキーに楽器が絡むところや「交信」のキーボード,「夜の公園」の初っ端のギターなど(オリジナルを聴くとハウンドドッグを思い出してしまう)が,今回のライブではうまく変化をつけて弾かれていた。

「Canvas」でtricotのキダが加わる。音が鳴った途端,なにがしかの感興が引っ張り出されじわっとしてしまう。「熱唱祭り」のときでさえ,せいぜい1,2回あったようなおさまりのつかない感情が,この後,何度も起きてくる。ツインギターで鳴るラストのリフが無茶苦茶恰好よい。

この日のメインは,ここから演奏された数曲だった気がする。「絶対的な関係」「絶対零度」「ショートホープ」「風が知ってる」「透明」「交信」。同期をはずした赤い公園の着地点が見事に描かれる。繰り返しになるけれど,「ショートホープ」のラスト前は,こういう音をバンドがイメージしていたのだろうという強さを感じた。残念なのは,それはもしかすると喪失による可能性であったかもしれないということだ。

前半,石野のボーカルはやや突っ込み気味に入ってくる。そのまま崩れず,場合によってはボーカルにサッと合わせるバンドとサポートミュージシャンの一体感。この切迫感が赤い公園に加われば無敵だ。

藤本の体調がバンドの解散になにか影響したのだろうかと思いながら会場に入ったけれど,それは杞憂だった。縦横無尽にステージを行き来し,キダとアイコンタクトを交わしながらベースをかき鳴らす姿は,これもまた可能性であったかもしれない。よろこばしさの質はさておき。(つづきます)

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