WordPress6.3

くるりのライブに行ったり,小田原まで日帰りで学会販売に出かけたりしたものの,それらすべてより先にWordPress6.3のアップデート問題だ。

よほどのことがないかぎり,ここ数年,WordPressのアップデートでトラブルに遭ったことはない。ときどきアップデートがかかるものの面倒だからと思い,自動更新設定をしていたのがだいたい誤りだったのだ。

8月9日の朝8時51分,自動更新の連絡メールが入った。事務所に来てパソコンを立ち上げる。WooComeerceの注文ページを確認しようとすると致命的なトラブル発生とのアラートが現れる。ダッシュボードに入れない。まずいことになった。せっかく売れ筋の本が出て注文が少し入り始めたタイミングでサイトがダウンしてしまっては元も子もない。恐る恐る外からサイトにアクセスすると,幸いサイト自体を見ることはできている。でもこれだってキャッシュを見ているだけであって,しばらくしたら見られなくなるかもしれない。

コロナの後遺症ではないけれど,作業ペースが半分くらいになった時期の遅れを取り戻すべく,あれこれすべきことはあるなかで,サイトの修理に時間が割けるだろうか,だいたい。アップデートが原因だろうから,ネットを検索してバージョンダウン,それもWordPress本体のバージョンを下げる方法を見つけた。新たにプラグインは入れられない,ダッシュボードに入れないのだからできるはずがない。とすると選択肢はひとつだけで,ファイルサーバー上に旧バージョンのWordPressのファイルとフォルダをアップロードして上書きするというものだ。そんなことした大丈夫なのか? 100%大丈夫とはどこにも書いていない。できればプラグインは止めたほうがよいと書いてあるけれど,そこそこの数のプラグインを使ったサイトで,フォルダ名をひとつひとつ書き換えて止めていく作業をミスなくこなす自身などどこにもない。

とりあえず,旧バージョンのWordPressデータをダウンロードし,不要というか書き換えたらとんでもないことになるフォルダとファイルを削除したものを用意した。あとはいつ上書きするかだ。

日中にやって,失敗したら,その対応で,他にすすめなければならない仕事がストップしてしまう。膨らみ切った風船を左手にもち,右手に針をつまんでにらめっこし続けるような緊張感のなか,サイトの更新はせずに,それではない仕事を一つずつ片づけた。それらのめどがついたので,フォルダとファイルの更新に着手したのは土曜日の昼のことだ。

ファイルサーバーに準備したファイルをアップロードし上書きするところまではできた。問題はフォルダの上書きだ。手順としては上書きされてよいはずが,しばらく待っても反映されない。まさかフォルダを一つひとつ辿って,ファイルを上書きし続けなければならないんじゃないか,これ? 無茶苦茶不安になる。とりあえずサイト上で商品の販売までできるようにして,支払いは銀行振込からカード決済,コンビニ決済まで対応している。素人でもまあ,そのようなサイトをつくることができたのだけど,このままではまた一からつくることになるかもしれない。段取りなんてメモしていないし,まずいなあ。

バックアップしていたはずのサイトデータにもっとも必要なデータが入っていないことを確認して,復旧どころか,どこにも書いていない方法をやってみることにした。つまりは,wp-adminとwp-includesのフォルダを一度,サーバーから削除して,旧バージョンのフォルダ(圧縮して)をアップロードし,サーバー上で解凍するという作業だ,それは。

こんな方法,恐ろしくて勧められないし,やるべきではないけれど,とりあえずこの方法でサイトを復旧し,今日,いくつかのぺージを更新するできた。思い出すだけでも恐ろしい。

一男

原ではなく,島田。

相変わらず,古本屋で島田一男の文庫や新書を見つけると買ってしまう。先日,出張で京都に出かけた際,軒先の均一棚で新書3冊を見つけたので買って帰ってきた。文庫でもっているものが1冊あったけれど,それ以外の2冊をコロナで療養しているときにだらだらと読み進めた。捜査官シリーズの新書で,そのうち一冊は最初のページからしばらくなんだか不吉なシミというかヨゴレ(なんだか薄い血糊のような感じ)があって,さっさと読み飛ばしていった。もう一冊をこの前読み始めたところ,最初に登場した犯人は途中で殺されてしまった。後は殺した2人がいかにお互いを先に始末するかで物語が進み,最後まであっという間に読み切ってしまった。

捜査官シリーズは警察側から描かれることがほとんどで,犯罪者に加担できるような描写はあまりないものの,構成自体は凝ったものが少なくない。キャラクターはいつもの島田一男の小説に登場してくるパターンだから深みや重さがないのが好き嫌いわかれるところだろう。

キャラクター設定にもう少し趣向を凝らすアイディアをもっていたならば,島田一男の小説はもっと耐用年数があったように思う。というか,小説としての構造をいただいて,今風のキャラでデコレーションすれば読まれそうな気がする。日活アクション映画に対する矢作俊彦の小説のような立ち位置で創作する者が現れはしないだろうか。

週末

コロナの後遺症というよりも,寝苦しい夜が続いていて眠りが浅く,日中にそのしわ寄せがくるような按排のようだ。

土曜日は夕方に都立家政の古本屋を覘く。3,4回来たことがあるものの毎回,店は閉まっている。この前の「モヤモヤさま~ず2」で取り上げられていたので,営業していたのだと思って夕方過ぎに出かけた。新古書店というよりも普通の古本屋に近い品揃えだった。夢野久作の文庫,石森章太郎のマンガを購入。野方まで戻り,夕飯用にお弁当を買って帰宅。

日曜日は午後から仕事の打ち合わせがあるというのに10時過ぎまで眠ってしまう。シャワーを浴びて本郷三丁目まで行く。昨日のお弁当がだいたい2人分くらいの分量があって,この年になるとそんな量を食べた翌日は半日以上何も食べなくても問題ない。

13時過ぎに落ち合い,17時くらいまで企画の打ち合わせなど。病みあけだからなのか,仕事で話す機会が多い方々はおしなべて熱量が過多なのか,すっかり疲れてしまった。中野まで出て,古本屋を覘き,ヤミヤミカレーで少し早めの夕飯をとる。古本屋をはしごして帰宅。2時間ほど眠る。

月曜日は,午後から打ち合わせが一件。配本の部決をとって伝票をつくる。火曜日に伝票を渡して,水曜,木曜と雑誌の仕事を済ませなければならないはずが,郵便局で1時間くらい手続きにかかったり,入金準備と作業で時間が割かれたりで,なかなか進まない。

最初のあたりまで読んで放っておいた『ネット右翼になった父』を読み終えた。親子関係は別に何を言うまでもない。それを新書で出す必要性はないように思う。当初の企画とはまったく違う内容になったと著者が書いているものの,耐用年数の短い本を新書で出す風潮はどうにかならないのだろうか。

シン・仮面ライダー

Amazonプライムで「シン・仮面ライダー」が見られるようになったので早速,アクセスしてみた。

仮面ライダーはもともと,逃亡者モノとしてスタートしたと読んだことがある。だとすると,物語を求心していくのは真実,なぜ,主人公は逃げざるを得ないのか,また本当の犯人を見つけ出すところにできてくるはずだ。これはサイボーグ009も同じで,にもかかわらず石森章太郎のマンガでは,犯人をやっつけるところに話をもっていく。仮面ライダーもサイボーグ009も物語の構成としてはいびつな形で,にもかかわらず,それをアクションとして描き切ってしまえるところに石森章太郎のすごさがある。

「シン・仮面ライダー」は石ノ森章太郎のマンガを柱に,テレビドラマの意匠をまとわせてまとめたように感じた。

リアリティというやっかいな問題は,たとえばマジンガーZと機動戦士ガンダムとの対比を経て,大友克洋による設計至上主義というかたちで1980年代に線引きがあった。ただし,それを大友克洋自身が作品によって広げていくことができずにドラッグと超能力を糊塗して引き延ばしていくしかなかった。だからその後,リアリティとはドラッグと超能力をいかに描くかの代名詞のように扱われるようになったのではないか。

仮面ライダーにドラッグと超能力の様子はほとんど含まれていなかった。それが1980年代の仮面ライダーblackによって超能力が含まれるようになり,オリジナルドラマでドラッグの要素も加味された。

「シン・仮面ライダー」で,悪=逃亡者の真実をどのように描くか,またリアリティの問題をどのようにクリアするか,もちろん,その前に物語をどのように進めるか,これらを考えることはとてもたのしいものだっただろう。

仮面ライダーの「ライダーキック」という必殺技を立ち止まって考えると,どのような原理で敵がやられるのかよくわからない。「シン・仮面ライダー」における「ライダーキック」は敵を壁や大地まで引っ張り押しつぶすための方法としてとらえられる。これは,「童夢」における超能力を援用したものだと思う。「シン・仮面ライダー」を見て,ライダーキックの解釈がとても新鮮だったのだ。

陽性なのか白なのか

先週土曜日から家内がせき込むようになった。熱はまだ出ていなかったものの,夜の眠れないほどのせき込みだったので日曜日に新宿医師会の休診センターを受診してはどうかといった。

結果は陽性で,今のルールでは12日までは外出禁止だという。外出できるほどの体力はない様子だからその後もしばらくは体調との兼ね合いで外出を控える必要はあるのだろう。

日曜日の段階で私に別条,体調の変化はない。月曜日は単行本の下版作業を済ませて,ただ印刷所の担当者が感染リスクのある人なので,白焼きチェックなどは対面での受け渡しはせずに行うことにした。

火曜日の午後,白焼きが届き,チェックを済ませた。このころから少し熱っぽくなり,喉の痛みを感じるようになってきた。まあ,自宅から事務所での行き来の間,人とすれ違うことがない時間帯だってあり,事務所内には私ひとりだ。知り合いの医師からは検査は受けた「ほうがよい」。脱水にならないよう水分はよく摂取して,との助言。

症状が現れたとはいっても,熱発(家内は39℃越えで私は38℃前),喉の痛み,咳はほとんど出ない,と症状はクリアには重ならない。検査を受けたほうがよいのはわかるものの,だるさへの対処を優先し,薬で対症的に行くことにしてしまった。

水曜日は朝に白焼きを戻し(入口に置いておくパターン),11時からイラストレーターとweb会議。トマトが贈られてきたので,一度家に戻り,夕方まで事務所で事務仕事を済ませる。

木曜日は午前中いっぱいで仕事を終え,午後から自宅に戻り眠る。還暦間近というのに,病気になると平気で10数時間眠れるのはよいことなのだろう。眠っては起き,少し本を読んで眠るのくり返し。この前,京都で買ってきたノベルズ版島田一男の『検視捜査官』を読み終えた。もう少し他の本を読むべきだったかもしれない。『アポカリプス殺人事件』の再読(というこの前読み終えたのだけれど)もおかげでかなり先まで進む。

金曜日は一日自宅で過ごす。踊ってばかりの国のライブは当然,キャンセル。よかったらしいのだけれど,この調子ではライブハウスには行けまい。木曜の夜くらいから喉の痛みが非道くなってきた。熱は相変わらず37℃台を行ったり来たり。アマゾンプライムで「トリック」を3本くらい見て,あとは眠り,本を読む。

というわけで何とか今日あたりから通常の生活が戻ってきた。

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