軋み指数

1981年,King Crimsonを再始動させたロバート・フリップが答えたインタビューのなかに「軋み指数」という表現があった。古い椅子をゆするとギシギシ軋むように,古い曲を演奏してみると軋むものがある。1969年から1974年までのCrimsonの曲のなかからフリップは軋むものを除外して,“太陽と戦慄パート2”と“レッド”のみをライブのレパートリーに加えたと説明した。このインタビューは渋谷陽一によりスティーブ・ハリスを介して行なわれ,NHK-FMの「サウンドストリート」と雑誌「ロッキング・オン」に掲載された。

今日,連載のことで執筆者である先生とメールでやりとりをしてると,辻邦生が『小説への序章』のなかで記していた「物語」と「小説」の違いのくだりを思い出した。その本のなかで辻邦生は「物語」は「それからどうしたの?」と続いていくのに対して,「小説」は「なぜ,そうしたの?」の答えに向かっていくものであるというように対比させていた記憶がある。

「それから?」と続きが知りたい人にとっての関心は「どうすればどうなるか?」で,「なぜ,そうなったか」ではないと書きながら,竹内敏晴さんの『癒える力』のなかの一節が続けて思い出された。

『……のために』ということは,未来のために行為することで,今,をゼロにすることです。

本を捲りながら,その前後を読み始めたところ,結局,最後まで読んでしまった。いまだにひっかかっていることにつながる言葉が至るところに潜んでいたのである。

企画を提出したのは1994年。翌々年に竹内敏晴さんとコンタクトがとれて連載スタートは1997年。小社の企画としてまとめあげることができず,晶文社さんから単行本化されたのが1999年。 軋むどころか,読み返すたびに発見がある本。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Top