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1年だったか2年だったかぶりに復帰する読書会の課題図書が カレン・M・マクマナス『誰かが嘘をついている』(推理創元文庫)。年末に買ってから,なかなか進まない前半を越えると,意外とすいすい読み進められた。

青春ミステリというと樋口有介の『ぼくと,ぼくらの夏』を思い出すくらいで,いや,その流れでいえば森雅裕とか,齋藤純(青春ミステリは書いていないか)など,つまりは矢作俊彦を軽くしたような「文体で読む」印象がある。

本書は4人の容疑者が一人称で語る場面を繋ぎ合わせて真相にたどりつく。SNSがガジェットに用いられていて,最近の若者のモノローグ,それも4人分となると,新人作家にはやや荷がかちすぎるのではないだろうか。

フランスの小説よろしく,ほぼ現在形で進む文体はまだしも,SNS時代の若者にしては言葉が多すぎるように感じた。状況や自分の気持ちを,4人それぞれがここまで言葉にするだろうか。唯一,言葉の少ないサイモンにはややリアリティを感じたが,それさえも小説の構造のなかで破たんをきたしている。

作者のかわりとなる登場人物を設定しなかったところに,この推理小説が面白くない原因は集約されるかもしれない。10代の登場人物たちが,40代であっても不思議ではないような。

ということで,大塚英志の『手塚治虫と戦時下メディア理論 文化工作・記録映画・機械芸術 』(星海社新書)を捲り始めた。

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