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調子があまりよくない。風邪をこじらせているのか,新たに風邪をひいたのかよくわからないが。

遅れている企画のゲラを一日読む。翻訳原稿は,ぴたりと日本語にはまると気持ちよいけれど,その数十倍,意味がわからない箇所に遭遇する。自分が文章を読むときの癖に,さらにしばしば気づく。文章がもつ定型のリズム,それはたとえるなら,主語と述語が2拍目と4拍目に入ってくるようなものだ。人によっては1拍目に述語をもってくる人がいて,それを自分のリズムに置き変えてしまうと,自分には読みやすいものの,執筆者の意図した何かをそぎ落としてしまうことになる,こともある。

決して少なくはない頻度で,直したほうが読みやすいと同意が得られるとはいえ,ときどき,ああ,こういうことを意味していたのか,と気づくことがある。私とはまったくリズムが違うので,エッシャーのだまし絵に焦点が合ったときのようなスリリングさを感じる。それはそれで面白いとはいえ,書き手の身になって文章を読む時間は長くない。

20時過ぎに会社を出て帰宅。夕飯をとり,Windows10化したラップトップの細かなところを調整する。

『コルテスの収穫』(中巻)を読みながら,「ビッグ・スヌーズ」を最初から捲り始めた。連載「So Long」のように,二村永爾の旧作をそのまま流し込むのではなく,小説に即して今日風につくり変えている感じがしてきた。海から上がった車と死体は「リンゴォ・キッドの休日」だし,藤村有弘っぽい画商の家での昏睡や若者とのやりとりは単行本『真夜中へもう一歩』。第6回くらいに登場した小柄な松本のモデルは松本茂樹さんだろう。この小説の設定時点では健在で,その後,亡くなられたと何か,たぶん掲示板で読んだ記憶がある。

1985年くらいの雑誌「NAVI」に,これも定かではないが日産シルビアとともに小学校教員の松本茂樹さんが登場したことを覚えている。愛車を紹介するコーナーだっただろうか。『マイク・ハマーへ伝言』の松本茂樹のモデルはこの人か,と思った。

「ビッグ・スヌーズ」は,とにかくすばらしい小説で,この調子が続くならば完結しなくてもかまわないと(当初の印象とは違って)思い始めている。ただ,全体に静謐な空気が漂うように感じるのは,この作品が『チャンピオンたちの朝食』に似た位置づけだからなのだろうか。

もちろん『ジェイルバード』は書かれていない。だからファンは「愛は破れても親切はきっと勝つ」なんてことを小説家に伝える必要はないのだ。

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