ロイガーの復活

1981年,北村昌士がキング・クリムゾンとコリン・ウィルソンを強引にくっつけたあたりから世の中が変わって映るようになった。数か月後,今度は滝本誠がキング・クリムゾンとフィリップ・K・ディックをくっつけたことで,世の中はさらに変わって映った。

コリン・ウィルソンの本で最初に読んだのは『宗教と反抗人』だったと思う。古本屋で買う以外,新刊を探そうとはしなかったので,『続アウトサイダー』を次に読み,『アウトサイダー』のページを捲ったのは1年ほど後のことだったように思う。

著者近影をみると,やけに腹の出たさえない男の姿があった。今にして思えば,描かれた内容に則した容姿のようにも思える。姿かたちに説得力はなかったものの,書いたものは面白かった。ハードカバー・ソフトカバーよりも文庫を探すことにして,『宇宙バンパイア』『スクールガール殺人事件』,そして『賢者の石』『ロイガーの復活』を続けて手に入れた。面白かったのは『賢者の石』だ。ボリュームがあり,継接ぎの知識でも物語をつくることができることに驚いた。『ロイガーの復活』はそれに比べると数分の一の厚さで,あまり印象がなかった。いや,印象がないものだと思い込んでいた。

週末から『ロイガーの復活』を読み始めて,この短い小説のなかにアーサー・マッケンがこれほど言及されていたことをすっかり忘れていた。『夢の丘』『怪奇クラブ』など,アーサー・マッケンの小説に一時期,とても嵌っていたことがあって,『夢の丘』にはたぶん,同じ時期に読んだモームの『月と六ペンス』に共通するものを感じたように思う。

『ロイガーの復活』を読み返しながら,しばらく蓋をしていた記憶を書き換えることになったのだ。

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