時代小説

と打ちながら,「時代小説」というのは不思議な言葉だと思った。「時代」+「小説」。「時代」ってなんだ?

日曜日は用事をしながら,空いた時間に司馬遼太郎の『燃えよ剣』を読んでいた。とりあえず上巻を読み終え下巻に入った。

書店の時代小説コーナーに収まっているような小説を手にすることはほとんどない。これまでに山田風太郎と山本周五郎を数冊読んだくらいかもしれない。辻邦生や遠藤周作など,江戸時代以前を舞台に描かれた小説は何作か読んだ。それらと「時代小説」の違いすら考えたことがなかった。興味がないのだ。

『燃えよ剣』を読みながら,ラノベのような文体だなと思った。テンポで成り立っているような小説だ。司馬遼太郎の小説は思っていたより遥かに軽いものだった。これは昭和30年代の作品だというから,その後,重厚になったのかもしれないけれど。映画でした知らないが「梟の城」にしてもエンターテインメントだったし,晩年の容姿の印象とどこかちぐはぐな感じがする。

新井薬師の古本屋で三好徹が描く土方歳三の小説が出ていたし(三好徹は沖田総司の小説も何作か描いていたはずだ),読み比べてみたくなってきた。

新井薬師

久しぶりの出勤を定時で終え,池袋で少し休憩して高田馬場に変える。ブックオフで司馬遼太郎『燃えよ剣』(上下巻)他,数冊を買って家に戻る。調子が悪い。北海道の寒さで風邪をひいてしまったのかもしれない。

函館で土方歳三の最後を思い出し,描かれなかった望月三起也の『俺の新選組』完結編は北海道が舞台になったのだろうと思うと,何か読みたくなってきたのだ。

土曜日は寝床でゆっくりし休む。午後から近くのクリニックに出かけて薬をもらう。家内と新井薬師で待ち合わせ,そのままあいロードの喫茶店で軽く昼食をとる。娘も合流し,ブロードウェイを覗く。4階の100均で3冊くらい。2階の古本屋で湊谷夢吉『魔都の群盲』を500円で購入。やけに状態がよいと思ったら1997年に復刊されたものだった。初版が出たときに買ったものは数回前のみちくさ市で売ってしまった。手持ちの本よろしく状態が悪くなってしまっていた。

蕎麦屋で夕飯をとり,家に帰ってから1時くらいまで眠った。どうにか体調が戻ってきたようだ。

函館

ホテルの朝食はバイキング形式だった。簡単に食べ終え,10時過ぎに出た。

市電で終点の湯の川まで行き,バスに乗り換えてトラピスチヌ修道院入口で下車。気にならないくらいの小雨が降っていた。10分ほど歩くとトラピスチヌ修道院が見えてきた。とても美しい佇まいだ。ただ,ほとんどない函館の印象と目の前の景色がうまくつながらない。

修道院のなかには入れないものの,きれいに手入れされた庭と山腹から望む海へと続く景色をみるだけで十分だ。小雨はおさまってきた。資料館を見学しながら,それでも函館の印象がうまく更新されないのが面白かった。

バスで函館駅まで戻り,昼食をとる。函館朝市のきくよ食堂に入った。ここ数回の家族旅行はガイドブックに忠実に動くことが多い。以前であれば考えられなかったものの,年をとるというのはそういうことなのだろう。昼時は14時までだったようで,ギリギリ間に合った。

小雨は続き,風が強い。およそ8月の気温ではない。はこだて工芸舎から五島軒を覗き,茶房ひし伊で休憩する。今日はロープウェイに乗る予定なのだけれど,まだ時間が早い。元町でまだ見ていない教会に出かけることにした。函館ハリストス正教会は17時に閉じてしまうが,ここもギリギリで間に合って中に入った。飾られた絵画が静謐な雰囲気を強調する。八幡坂まで歩き,折り返してロープウェイで山頂に行く。霧と風が強い。日没の19時10分まで一時間ほどあったけれど,展望台から広がる函館の景色を眺める。無料の映画を見に行き,また窓際に戻る。ときどき霧が晴れる。日没が近づくにつれて,団体客が続けて入ってきておそろしく混雑してきた。日没後はほとんど霧一色になった函館の夜景。夕飯は展望台のレストランジェノバで軽く済ます。

ロープウェイで下り,八幡坂から歩いて末広町まで行き,市電でホテルに戻った。

 

3日目も雨が続く。10時過ぎにチェックアウトを済ませ,フロントに荷物を預かってもらう。五稜郭公園まで歩く。朝食のとき,都内から出稼ぎ(?)に来ているというスタッフの人から,歩道の手すりが五角形になっていること,いくつかあるオブジェが可愛いと伺ったので,実物を眺めた。

五稜郭タワーは微妙な高さで,とりあえず登ったものの,私はすぐに降りてきてしまった。北方領土返還署名の様子を見て,ようやくここが北海道なのだと腑に落ちた。昼はあじさい本店に並び,塩ラーメンと餃子。

ホテルに戻って荷物を受け取り,市電で函館駅に向かう。函館美鈴に入った。コーヒーを飲み,豆を焙煎してもらう。棒二森屋店にくまざわ書店が入っていたので覗く。昨日,今日で函館と土方歳三がつながったため,面白そうな本があれば買ったのだけれど,めぼしいものが見つからず,ポパイの書店特集号を買った。

JTB特典のスナッフルズの無料券を利用して休憩した後,バスで空港まで行く。ビールを飲んで19時半の飛行機で帰ってきた。

函館

青森までは行ったことがあるものの、生まれてから半世紀を越えてなお、北海道に入ったことはなかった。

出張で年数回は日本中に出かけた20数年。北海道出張は管理者に確保され,その後は出張自体が減ってしまったため(出かけるのも面倒だ),いきおい今後とも仕事で北海道に行く機会はなさそうだ。

夏休みに家族で旅行しようということになった。北海道に行こうと決めていたものの,当初は札幌・小樽に出かける予定だった。ところが私がパンフレットのページを開き間違え,そのまま家内が旅行会社に行ってしまった。予約してきたのは函館旅行だった。結論からいうと,函館旅行にしてよかったと思う。

8時前の便で立つので5時起きで羽田に向かう。あまり揺れることもなく,機内ではJALの無料Wi-Fiサービスを試し,函館に着いたのは10時過ぎ。

今回もJTBのツアーを使ったのだけれど,まったくJTBの威光はおそろしいほどのものだ。ツアーで払ったのは交通費+宿泊代だけなのに,以下のサービスが付いていた。どういうしくみになっているのだろう。ガイドブックの出稿料の値引き(無料)あたりくらいしか思いつかない。

  • 函館空港で手続きするとホテルまで荷物(1つ)を届けてくれる(600円相当)。
  • 2日分のバス・市電共通一日乗車券(1,700円相当)
  • 函館山ロープウェイ往復券(1,280円相当)
  • ホテルチェックイン時にチーズケーキとドリップコーヒーサービス(?)
  • 函館駅近くの喫茶店でケーキセットサービス(700円相当)/他

特に一日乗車券は便利で,初日・2日目と,これを使ってあちこちを観て回った。

とりあえずバスで函館駅に向かう。函館空港から20分ほどの距離なので,11時前には着いた。風が強く,寒い。まだ雨は降っていない。娘がコンビニで用事を済ませた後,市電(路面電車)で十字街で降りた。坂を上りながら,家内と娘がところどころ店を覗くのに従う。途中で見つけた喫茶店・YAMAYOSHI COFFEEで遅めの朝食をとった。落ち着いた店内,ブレンドが独特の味で美味しかった。

八幡坂通を登り,突き当りを右に入る。再び店を覗きながら進み,旧函館区公会堂に入る。このあたりから自分が函館に来ているのか,長崎旅行の続きをしているのかわからなくなってきた。雰囲気が全体,長崎と似ているのだ。昨年から神戸,長崎,函館と,わが家の旅行先は,印象が少しずつ重なる土地のような気がする。

元町公園から旧イギリス領事館を見学した。紅茶を飲んで休憩し,坂を下る。市電で十字街まで戻り,赤レンガ倉庫街を観てまわる。ここで遅めの昼食。家内と娘を待つ間,しばらくうとうとしてしまう。17時過ぎまでいて,市電で五稜郭公園前まで行く。丸井今井店内の喫茶店サロン・ド・テ ペシェ・ミニョンで休憩。ホテルにチェックイン。

夕飯はホテル裏の呉竹本店紫季海仙。ふつうに食べると5,000円以上はかかりそうなお店だけれど,チョイ呑みセット2,000円という案内が目につく。ソフトドリンクも可というので入ってみたところ,おそろしいコストパフォーマンスのよさに茫然としてしまった。ビールにお通し2品。刺身の5点盛りに鯖のから揚げ。サラダにかれいの煮つけ,寿司4貫。申し訳ないのでビールをお代わりしたけれど,函館基準というよりも,この店のクオリティの高さなのだろうと思った。

すっかり満足して一日目を終えた。

週末

土曜日は部屋を片づけて,動画を眺めて過ごす。夕方から外出。高田馬場で遅めの昼食はピザと白ワイン。渋谷東急東横店の古本市を覗く。久しぶりに赤間剛の新書2冊,大西連『すぐそばにある「貧困」』(ポプラ社)。家内,娘と待ち合わせ,上の階で夕飯をとる。

日曜日は昼から家内と池袋に出かける。丸善池袋店で昼食。いい感じの店づくりだけれど,これでずっと続くのか心配になってきた。娘と合流しパルコの喫茶店で休憩。夕飯用に弁当などを買って帰る。家で夕飯をとる。

そろそろ北海道旅行の準備をしなければならない。『真夜中にもう一歩』とともに『すぐそばにある「貧困」』を捲りはじめた。

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