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“坩堝の電圧”前のくるりのアルバムで,何が一番好きかというと“THE WORLD IS MINE”で,それはたぶん,くるりというか岸田繁をはじめて知ったのが「ロッキンオン」でのロバート・フリップインタビューだからかも知れない。そのときのアントン・コービン風写真は以前アップした。ここ

だから,ある時期のくるりにプログレ風気配を感じるのは,その影響かもしれない。

“GUILTY”から“静かの海”をはじめて聞いたとき,地味な曲が続いて,“静かの海”など,ほとんど音響系ともいえるアプローチで,よくメジャーなレーベルから出せたなあと思うほどのチャレンジだ。 “GO BACK TO CHINA”~“WESN”へと,まあこんなに日本風の音質から隔たった次から次へと繰り出すバンドに愕然とした。

だから,“TEAM ROCK”と“THE WORLD IS MINE”の再現ライブとの情報に接したとき,これは何にもまして行きたいと思った。

とりあえず,セットリスト。

  1. TEAM ROCK
  2. ワンダーフォーゲル
  3. LV30
  4. 愛なき世界
  5. GUILTY
  6. 静かの海
  7. GO BACK TO CHINA
  8. トレイン・ロック・フェスティバル
  9. THANK YOU MY GIRL
  10. Army
  11. 砂の星
  12. 男の子と女の子
  13. アマデウス
  14. 水中モーター
  15. ワールズエンド・スーパーノヴァ
  16. C’mon C’mon
  17. 永遠
  18. ばらの花
  19. リバー
  20. カレーの歌(アンコール)
  21. 迷路ゲーム(アンコール,ギター弾き語りバージョン)
  22. ブレーメン(アンコール)
  23. Morning Paper(アンコール)
  24. Liberty & Gravity(アンコール)

購入

一箱古本市に参加するようになってから,本を購入する冊数が極端に増えた。古本もそうなのだけれど,SNS経由で新刊の情報も増えたので,いきおい興味をもつ本が増えたどころか本屋自体に行く回数も増えた。もともと,本屋に行く回数は少なくなかったけれど,大学時代に戻ったくらいの感覚だ。

週末から購入した本をまとめてみると,以下のような塩梅。

新刊

  1. 北杜夫:少年・牧神の午後,小学館P+D BOOKS,2015.
  2. 辻邦生:廻廊にて,小学館P+D BOOKS,2015.

古本

  1. モーム:手紙,角川文庫,1956.
  2. 常盤新平訳:サヴォイ・ホテルの一夜,旺文社文庫,1985.
  3. 川人忠幸:ブッダ・ロード,角川文庫,1987.
  4. 武田百合子・野中ユリ:ことばの食卓,ちくま文庫,1991.
  5. 山川方夫:夏の葬列,集英社文庫,1991.
  6. 大塚英志・吉本隆明:だいたいで,いいじゃない。,文春文庫,2003.
  7. 小林信彦;ぼくが選んだ洋画・邦画ベスト200,文春文庫,2003.
  8. 佐村河内守;交響曲第一番,講談社,2007.
  9. 玉川重機:草子ブックガイド1,講談社,2011.
  10. 池田邦彦:シャーロッキア!3,双葉社,2012.
  11. 後藤稔:名探偵を推理する③ フィリップ・マーロウ―傷だらけの騎士道的精神,書肆侃侃房,2013.
  12. 小林信彦:人生,何でもあるものさ,本音を申せば⑧,文春文庫,2015.

北杜夫も辻邦生もハードカバーや文庫本で持っているものではあるけれど,新しい器とワンコインで購入できる価格設定にそそられてレジへ持っていってしまった。

武田百合子の『ことばの食卓』も手元に一冊あるけれど,状態がよかったので買ったものだ。『だいたいで,いいじゃない。』もハードカバーで持っている。池田邦彦ももしかしたら買ったかもしれないが,少なくとも2巻までは読んで,ただ読後感はあまりよくなかったのでどうしようかと思ったけれど108円だからという理由で。佐村河内本は,今日手に入れて,ざっと読んでしまった。面白くなかった。

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18日に,新木場スタジオCOASTで,くるりのライブを見た。昨年のPierライブ以来,今年になって初めてのくるりだ。

感想はぽつぽつと書いていくことにして,カレーについてまとめてみる。

アンコールで,岸田繁のピアノ弾き語りで「カレーの歌」が演奏された。1970年代の終わりからコンサートやライブを見るようになってから,はじめて歌を聴いてじーんとしてしまった。そのことがとても不思議だった。

「カレーの歌」はとてもシンプルな曲で,歌詞もストレートだからだろうかとも思ったけれど,「東京」だって似たようなものだ。何回も聴いた「東京」とはまったく違うかたちで琴線をゆさぶられた。

たぶん,カレーだからなのだ,と思った。

子どものころから,嗅覚は記憶とつながる。アスファルトの焼ける匂い,土管のなかの砂と化学薬品が入り混じった匂い,古本屋の匂い,友だちの家の匂い,新しい学校の匂い,ランドセルの匂い,潮の匂い,思い出せばキリがない。

カレーの匂いも,だから,そうした記憶の1つだった。母親がカレーをつくるときの匂いは,もしかすると子どものころの記憶のなかで,いちばん慣れ親しんだものかもしれない。「カレーの香りは……」と歌われた途端,一気に記憶だけが蘇ったのだろう。それは『ららら科學の子』の主人公が銀座の近藤書店で本の匂いを嗅いだときと,もしかしたら似ているのかもしれない。小説では匂いがダイレクトにくるのだから,たまらなかっただろうけれど。

数年前,仕事ででかけたシンポジウムで聴いた話をまた思い出した。これは以前,記したはず。

大学生くらいのその女性は,精神疾患を抱える母親をもつ。小さいころは,友だちのお母さんや家と自分のまわりがなにか違うと感じながら育ったそうだ。大人になり,母親の主治医から,母親は精神疾患を抱えながら,すごくがんばって子育てと家事をやってきたことを伝えられた。でも,いまの状況では入院して休ませたほうがよいと思うので,わかってほしい。そこで彼女は,はじめてこれまでの諸々が腑に落ちた。

小学校の調理実習の時間のことを思い出して話しはじめる。

うちが友だちのところと違うと感じていたので,「ふつう」と言われるととても不安になった。その日はカレーの調理で,先生が「じゃがいもとにんじんは,おうちでふつうのカレーをつくるときと同じに切ってください」と言われた途端,こう感じた。「うちのカレーってふつうなの? わからない」。その様子をみた先生が材料の後片付けなどの役割にすぐ,まわしてくれた。

「“ふつうのカレー”といわれると不安になるんです」

古本屋

昨日は体調がすぐれなかったので,定時で仕事を終えた。

不忍通り経由で上野行きのバスが出ていることは知っていたものの,乗ったことはなかった。
今週一度,古書ほうろうに寄ろう思ったのは,Twitterで「ミステリマガジン」の1978年前後20冊が均一棚に並んでいると知ったからだ。
「真夜半へもう一歩」「ヨコスカ調書」が連載されていた当時の「ミステリマガジン」は1980年代のはじめに神保町で手に入れた。そういえば古書センターの先にあった「ミステリマガジン」のバックナンバーが1冊200円程度で手に入った古本屋はどうなったのだろう。

大塚三丁目から乗って道灌山下で降りた。

均一棚に並ぶ「ミステリマガジン」の一番古いものは「真夜半へもう一歩」最終回掲載号で,「ヨコスカ調書」は第1回と第4回掲載号があった。いずれも実家から引越しの際に紛失せず手元にあるので買わなかった。「真夜半へもう一歩」第1回掲載号が本の山に埋もれて出てこない。あればほしかったのだが。

均一棚で「磁場」臨時増刊号「村上一郎追悼特集号」,北杜夫『輝ける碧き空の下で』第1部,第2部(ハードカバー)を,ほかの棚でナット・ヘントフ『ジャズ・イズ』(白水社)を購入した。

「磁場」に掲載されている年表をみると,1965年に「教育大学講師として,翌年3月まで教鞭をとる」とある。矢作俊彦との接点はこのあたりなのだろうか。

『輝ける碧き空の下で』は昔,文庫本で読んだ。その本は黴てしまい再読するには厳しかったので,しばらく前から古本屋で見つけたら買うことにしていたのだけれど,ハードカバーが揃って均一棚に並んでいるのを目にして,思わず買ってしまった。辻邦生の『背教者ユリアヌス』も箱入りソフトカバーのものがあって,これも買おうかと思ったけれど,同じものが自宅にあるので踏みとどまる。

均一棚には,矢作俊彦の『ツーダン満塁』もあった。しばらくほかの棚を眺めていたところ,別の人に買われてしまった。目の前で矢作俊彦の古本が購入されるのを見たのははじめてかもしれない。状態のよくない「終末から」の創刊号も並んでいたが,これももっているので買いはしなかった。

特殊なもの

半村良の『石の血脈』を再読した後,高木護『爺さんになれたぞ!』(影書房),与謝野文子『美と略奪』(白水社),大塚英志『初心者のための「文学」』(角川書店)を捲りながら,今月の課題作品が収載された山川方人『親しい友人たち』(創元推理文庫)を読み進めている。

一冊一冊,決してつまらなくはないのだけれど,寝る前に『フィルムノワール/黒色影片』のページに目を移し,数行たどると,それだけで満足してしまう気分と比べようはない。

それぞれ100円で手に入れた辻邦生の『海峡の霧』と『微光の道』(新潮社)も少しずつ読んでいて,こちらは,自分の記憶を辿っていくような感じで文体をトレースしている。フォニーであろうがなかろうが,矢作俊彦の文章を読むときとは別の面白さがあることを思い出した。

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