古本

矢作俊彦のハードカバーがまとめて古本屋に出ていた。1987年当時の刷りばかりなので,もとの持ち主がその頃,買ったのだと思う。

一冊108円で,私が持っていない刷りのものだったので,えいやっ! と購入してしまった。といっても4冊。『マイク・ハマーへ伝言』と『リンゴォ・キッドの休日』『死ぬには手頃な日』『ブロードウェイの自転車』はなかった。すでに購入されたのか手放さなかったのかは判らない。もともと買わなかったのかもしれない。

『舵をとり風上に向く者』は発売1か月で3刷りになっている。『真夜中へもう一歩』も似たような動きだ。私は当時,刊行を首長くして待って買ったので,手元にあるのはほとんど初刷りばかり。矢作俊彦の小説を増刷本で読む習慣はなかった。

先日,ハードカバー版『引撃』第3刷りを手に入れ,修正されている箇所をざっとチェックしたところ,あぁ,いろいろ手が入っているのを目にしたものだから,刷りごとの違いをいつかまとめられないかと思った。そんな気持ちに後押しされて購入してしまった。

ただ,ひとたびここに足を踏み入れてしまうと,抜け出せそうになくて,おそろしい。

 

山川方夫

今月の読書会,山川方夫の「夏の葬列」が課題だったので,刊行されたばかりの創元推理文庫で読む。ショートショートなので,この作品自体はすぐに読み終えた。続けてほかの作品にも目を通す。

1965年に事故で亡くなったというのだから,私が生まれてそれは本当にすぐの時期で,小説全体,すこし軋んでいる感じがした。ショートショートの文体は結城昌治に少し似ていたけれど,その文体で固定しているわけではなく,純文学雑誌に掲載された作品の文体とやけに違う。使い分けられるといえば聞こえがいいが,ショートショートに振り回され,文体が固まらないうちに亡くなってしまったのかもしれない。

「夏の葬列」は国語の教科書に掲載されてもいるそうで,この小説を読ませて,どのように教えるのか想像すると,心配になる。ショートショートのつくりとしては,たとえば江戸川乱歩の「防空壕」を思い出した。でも,「防空壕」は少なくとも教科書に載るような作品ではないしな。などと考えながら読書会に参加した。

被害者/加害者の二項対立ではなく,罪の意識を抱えながらいかに生きるかという意見を聞き,なるほどと思った。しかし,この事件を罪と片づけてしまってよいものかは悩む。どうすればよかったのか考えたりすると,まるで,2人しか乗れないボートを使って救助に出かけた男性。妻と子どもがおぼれている。どちらを助けるか,のような,まったくどうでもいい思考実験と五十歩百歩の答えしか出ないだろう。(あとで加筆予定)

25

ライブで“リバー”を最後に聴いたのは,たぶん2013年1月の武道館だったと思う。かなり特殊なセットリストのラスト近くに鳴った“リバー”と変わらず,今回も本編ラストにふさわしい印象だった。

ネット情報によれば,アンコールは会場によって少し違う曲が演奏されたらしい。この日は,岸田繁のピアノ弾き語りで“カレーの歌”。最初に書いたとおり,ライブで涙腺を刺激されたのは,たぶん,うまれてはじめてだと思う。本当はそこから“ブレーメン”に行くはずが,スタッフがベースを渡し間違えてしまったため,イントロでストップがかかる。楽器の調整の間に,これはギター弾き語りで“迷路ゲーム”。アクシデントが起きなければ演奏されなかったようで,なんだか得した気分だった。

“ブレーメン”はトランペットがいないため,ギターとシンセが代わりをしたアレンジ。力技だけれど聴きなれない。続く“Morning Paper”はクリフ・アーモンドのドラムの凄まじさで,原曲や最近のライブでの演奏の数倍の格好よさ。この日一番の聴き応えだった。アンコールラストの“Liberty & Gravity ”もホーンが抜けた分,ダイレクトというよりもやや直線的なアレンジに感じた。

このあと,どうなるのかわからないものの,ライブとしてはとても堪能した。

24

新木場Studio Coastには,去年のくるりのライブ以来になる。家内とともに,雨のなかB300番台でフロアに入る。傘と鞄を抱えているので,私はPAの脇,フェンスに位置をとった。家内はまだ空いているフロアの前のほうに行った。

ライブは“TEAM ROCK”の1曲目から順番にはじまった。とにかくドラマーの音に耳が向く。クリフ・アーモンドのドラムをライブで聴くのははじめてで,これが冒頭,凄かった。バスドラの音がとにかくでかい。サポートギターも昨年,中野サンプラザで観たときよりは慣れたように聴こえる。ツアーの本数を重ねたからだろうか,サポートキーボード,コーラスもとてもよい感じ。

“ワンダーフォーゲル”はピコピコ付きで,“Lv30”は,とにかくドラムがよかった。実のところ,アンコールになるまで,ドラムに関してはこの曲が一番よかった。

数曲続け,そこから“TWIM”に入る。リアレンジ版“静かの海”は,音響系+プログレという感触で,これがとてもよい。

“トレイン・ロック・フェスティバル”は「印西牧の原行き」とオリジナル通り歌われて,途中,ジャムセッションっぽくテンポを落とした後,BPMをかなり上げて締める。“Army”は前回聞いたときにも増してポリリズムな音の重なりが心地よく,やはり感触はプログレ。静かな曲を続けた後,“水中モーター”から“WESN”“C’mon C’mon”“永遠”へとノンストップ。ライブのピークをこのあたりにもってきたようなのだけれど,打ち込みシンセの白玉のレベルが低く,反対にバスドラとスネアは大きい。ハイハットでアクセントを刻んでいるのだけれど,その音のバランスがいま一つのため,四つ打ちのリズムがミシンのようにダッダッダッという感じで,たぶん,PAで音のレベルをもう少し調整したら,よかったのにと感じた。同期バージョンの“WESN”はファンファンのトランペットが入って,ドラムは福田洋子,キーボードは奥野真哉という布陣がかっこよい。(つづきます)

 

23

“坩堝の電圧”前のくるりのアルバムで,何が一番好きかというと“THE WORLD IS MINE”で,それはたぶん,くるりというか岸田繁をはじめて知ったのが「ロッキンオン」でのロバート・フリップインタビューだからかも知れない。そのときのアントン・コービン風写真は以前アップした。ここ

だから,ある時期のくるりにプログレ風気配を感じるのは,その影響かもしれない。

“GUILTY”から“静かの海”をはじめて聞いたとき,地味な曲が続いて,“静かの海”など,ほとんど音響系ともいえるアプローチで,よくメジャーなレーベルから出せたなあと思うほどのチャレンジだ。 “GO BACK TO CHINA”~“WESN”へと,まあこんなに日本風の音質から隔たった次から次へと繰り出すバンドに愕然とした。

だから,“TEAM ROCK”と“THE WORLD IS MINE”の再現ライブとの情報に接したとき,これは何にもまして行きたいと思った。

とりあえず,セットリスト。

  1. TEAM ROCK
  2. ワンダーフォーゲル
  3. LV30
  4. 愛なき世界
  5. GUILTY
  6. 静かの海
  7. GO BACK TO CHINA
  8. トレイン・ロック・フェスティバル
  9. THANK YOU MY GIRL
  10. Army
  11. 砂の星
  12. 男の子と女の子
  13. アマデウス
  14. 水中モーター
  15. ワールズエンド・スーパーノヴァ
  16. C’mon C’mon
  17. 永遠
  18. ばらの花
  19. リバー
  20. カレーの歌(アンコール)
  21. 迷路ゲーム(アンコール,ギター弾き語りバージョン)
  22. ブレーメン(アンコール)
  23. Morning Paper(アンコール)
  24. Liberty & Gravity(アンコール)
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