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金曜日に事務所探しの連絡をするはずが,18時から打ち合わせが始まってしまう。とりあえず土曜日の昼,連絡せずに不動産屋へと向かう。最初,若手の方に対応してもらったものの,紹介の旨伝え,店長さんに30分ほど相談。まずは数か月のスパンをめどに,物件が出次第連絡をいただくことに。

14時から新宿3丁目で打ち合わせ。待ち合わせた喫茶店が入れず,近くの喫茶店に移動する。急に大雨。お世話になった先生の甥御さんに,この間,相談をしている二人を加え4人。1時間半ほどあれこれ話したり,話を聞いたり。途中,一人が仕事の都合で抜け,3人でライオンに移動して1時間少し。

甥御さんはこの7年,一人出版社を営む方で,話を聞くと,面白かった時期の某月刊誌がキャリアのスタートだったそう。営業畑ではなく編集から独立し,40代を乗り切ったのか,乗り切ろうとしているあたりだろうか。

集まった4名はいずれも編集者で,20世紀の出版の世界を体験しているから,了解可能な場がいくつもある。空葉堂書店さんと話したときもそうだったし,今日も話しながら,起業の方向が少しずつ固まってくる感触がする。一人でああでもない,こうでもないと考えるのに比べ,とにかく助かっている。

その後,家内と京王百貨店で待ち合わせ。私はビールがまわっていて少し休みたいところ。西口のブックファーストを覘き,ハルクで休憩。夕飯用のお弁当を調達して帰宅。雨は止んでいる。夕飯をとり,10時前から眠る。1時くらいに起きだし,支度をして本式に就寝。カーター・ブラウンが面白い。

書店

16時過ぎに退社。下落合の空葉堂書店さんに行く。

事務所用の物件を探していて,駅から遠くはなく,古書を並べるスペースもとりやすそうなそこは候補のひとつだ。少し前の土曜日だったかに覘きに行くとすでに店舗が入っていて,書店だった。空葉堂書店さんは,昨年12月にオープンした領域特化型の新刊書店だ。

17時からお時間をいただき,話を伺う。というよりも,こちらが半分以上話してしまい,結果,この間の雑多な状況が整理されたようで,貴重な時間をいただき,ただただ感謝。2時間も居座ってしまい,そのまま帰宅。ではなく,一度,高田馬場まで戻り,ブックオフを覘く。佐江衆一『横浜ストリートライフ』が単行本で並んでいたので購入。で,帰宅。夕飯をとり,サイトの調整をしていると急に,ロキシーミュージックを聴きたくなり,YouTubeで続けて。

とりあえずひとりで場をつくることになるので,なかなかとっ散らかった状況を整理できなかった。ただでさえ,勘所はあっても理解するまでの自分のタイムラグに日頃,頭を抱えているものだから,物事を理解しないまま,勘だけで進んでいるようでかなり不安だったのだ。

霧が晴れたかのようで,まあ晴れた先には混沌とした場があるものの。

Date

Windowsのアップデートで半時間ほど手間取る。帰宅後,夕食を終え同じようにアップデート。Storesに届いた注文書籍の発送準備をして眠る。

35年と少し前,一人暮らしを始めた。日々の買い物には当初,国道沿いのロヂャーズを利用したものの,どうにも1つあたりの量が多い。徹は「グロスでしか売らないんじゃなかい」と皮肉っていたが,とにかく一人暮らしにはあまり役立ちそうになかった。しばらくはそれでも出かけたが,そのうち,吊るし以下のあちこち窮屈なつくりの服を買うときぐらいしか足を運ばなくなった。そういえば,米に虫がわくことをロヂャースで買った米を通して知ったのだ。古米と思しきそれは,ボウリング場だった頃の名残の車寄せに積んであったものだ。一人で食べきる遥か前に虫がわいてしまった。少し油がまわったかのような古米の匂いを覚えている。

そのうち,バス通りを駅に向かい,橋をひとつ渡った先のスーパーマーケットを利用するようになった。こちらは一人暮らしに事足りる量をそこそこの安さで販売していた。母親に頼まれて買い物をする以外,何ら切実な用事でスーパーマーケットに入ることがなかった私にとって,その店で,夕方になると惣菜に貼られる割引シールは意外とカルチャーショックだった。

さっきまで500円で並んでいたものが,途端,20%オフになるのだ。いくら世事に疎くとも,それを利用したほうが便利だということくらいはわかった。講義が終わり,学食や喫茶店でいつ終わるともないまま時間を潰していると,あ,そろそろ値引きの時間だ,と思うようになった。貧乏くさいったらありゃしないが。奨学金とバイトで仕送りが必要でなくなった翌年までの間,タイムセールのものを探しにスーパーマーケットへときどき足を運んだ。

夏休みになる少し前,徹や喬史だけではなく,昌己や伸浩あたりと時間を潰すことが多くなってからも,中座したり別れたりしてスーパーマーケットに向かった。どうせ食う時間は同じなんだから,時間に対価を払う必要ないだろう。そんなふうに言って,安売りの惣菜を買い,その日の夕飯を自宅でとった。

そんなことが続いたのだろう。あるとき,伸浩が別れ際に「昌己が『時間に対する対価』ってそのとおりだな,と言っていたぞ」と捨て台詞を投げつけてきた。褒められているのか貶されているのかよくわからない。ただ,へえ,そんなふうに伝わるものか,と思った。

家内と出かけ,値下げシールが付いた惣菜やお弁当を買うことが少なくない。衒いもあまりない。この前,吉祥寺に出かけたときは,サラダが40%オフというシールを見つけ,買い求めようとしたところ,ショーケースに並んだものすべてが40%オフではなかったので,キャンセルしてしまった。さすがに,値下げになっていないためにキャンセルするというのは忍びないと思ったものの,そのあたり家内はサラッと流してしまえるようだった。

コント番組でネタにされてもいる,この値下げシールをめざした買い物は,40年近く前,すでに始まっていたことを今更ながら思い出した。

3/9

朝,やや調子悪く,30分ほど遅れて起床。それでも15分も遅れず出社したのはどこでどう時間を短縮したのかわからない。

ただ,調子はよくないので18時で退社。頼まれている本を探しに吉祥寺まで行く。家内と落ち合い,古本屋を覘くものの,結局,みつからない。2冊文庫を買って出る。アトレで夕飯を調達し,東中野経由で帰宅。すぐに娘も帰ってきた。夕飯をとり,サイトのデザインを更新したり。

赤い公園が解散だというので,急遽,ファンクラブに入り,ラストライブのチケットを申し込んだ。これがなんだかやっかいな代物で,チケットを予約できない理由は娘に確認してもらってようやく理解した。これまで数多になったこの手の理不尽な登録方法は,娘に尋ねれば解決していたのかもしれない。

赤い公園の解散はさておき,あの秀逸なリズム隊の今後に思いを巡らせる。数年前,赤い公園のライブをみたとき,このリズム隊に支えられた平沢のライブが見たいと思ったことがある。「モンスター」期の楽曲にはもってこいだな,というように。キーボードのサポートをそのときは考えなかったけれど,赤い公園のリズム隊でP-MODELを演奏するイメージは嵌るような気がする。少し前の楽曲でも,たとえば「カルカドル」あたりは,「ひつじ屋さん」を鳴らしたリズム隊の演奏で聴きたくなる。ここ数年のサポートミュージシャンに比べると,はるかによいと思うのだけれど。

カーター・ブラウンの文庫を引っ張り出してきて,通勤途中に捲っている。

ビッグ・スヌーズ

矢作俊彦の「ビッグ・スヌーズ」は連載のなかできちんと謎が解けつつあって,これがなんだか新鮮な感じを覚える。思えば「フィルムノワール/黒色影片」は連載後半,リアルタイムで読まなくなってしまい,「チャイナマンズ・チャンス」は途中から別の話にすり替わった(すり替わった話はきちんと畳まれてはいるが,大島渚の映画よろしく,同じ場面が繰り返された気がする)。「ルッキン・フォー・ビューティ」はまとまっていた記憶がある。デバイスでは読みづらく,後半はほとんど覚えていないものの。一方で『引擎/ENGINE 』単行本化の際に使われた場面があり,もう一方で「チャイナマンズ・チャンス」の初っ端,つまりは「ビッグ・スヌーズ」の出だしと同じ場面が用いられたりして,謎が解けたという感じはあまりしなかった(「ビッグ・スヌーズ」について書き始めると,いつも似たようなエントリーになってしまう)。

「常夏の豚」は最後,きちんとまとめに入っているけれど,最終回の前半は「眠れる森のスパイ」だったはずだ。この小説家の作品でそれは大したことでない。で,「ビッグ・スヌーズ」は「NAVI」連載の長編2作以来,久しぶりに連載時に話を畳んでいる感じを受けた。「ウリシス911」と「あとは沈黙の犬」はパッチワークにしては見事だった気がする。あれをまとめないのはなぜだろう。

で,「ビッグ・スヌーズ」だ。もうひとつ,今回,二村が傷を負うところに驚いた。これまで萬金油で直るくらいの傷しか受けていなかったはずの主人公が,今回ばかりはかなりの衝撃だったはず。次回作を期待してしまうのだけれど,どのような姿で登場するのか興味がそそられる。

『マイク・ハマーへ伝言』で翎は,あらかじめ傷をもった者として登場するな。

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